知財の種は困りごとの中にある

3Dプリンターで「押さえる」治具 をつくる
外村先生の1年生の棚づくりが、組立の段階に入っています。「自分の工夫をひとつ入れる設計」で進めてきた授業です。切り出して加工した板材を、釘と接着剤で固定しているところです。組立で困るのは、板と板を直角に合わせたまま手を離せないことです。片手で板を支えながら、もう片方の手で釘を打つことになります。少しでも動けば、接合がずれてしまいます。以前「どうやって押さえる?」という記事で、材料をどう固定するかが加工の出来を左右すると書きました。切る場面でも組む場面でも、同じ問題が出てきます。
今回、教室に新しい道具がありました。12ミリの板と12ミリの板が直角に交わる角に、そのままはめこめるスリットのようなものです。このスリットに板をはめると、板は直角のまま止まり仮固定されます。すると両手が空き、接合作業に集中することができます。 3Dプリンターというと、好きな形をつくって楽しむ機械だと思われがちです。それも大事な入口ですが、ものづくりの現場では、作品の前に、作品をつくるための道具をつくることがよくあります。治具と呼ばれるものです。治具があるから、ずれずに、同じ精度で、何度でもつくれます。外村先生の教室では、パソコンの中で設計したデータが、木工作業の現場で働いていました。
特許や知的財産というと、何か大きな発明を思い浮かべるかもしれません。でも私が見てきたかぎり、道具は「ここを押さえられたら」と困ったところから生まれてきます。机の上で考えているだけでは、その困りごとに出会えません。外村先生の授業は木の棚をつくる授業ですが、私には知財の授業にも見えています。棚が組み上がるまで、あと2時間ほどかかると思います。治具を使ってみた生徒のなかから、自分なりの押さえ方を思いつく人が出てくるかどうか。特許や知財とはこのような身近な「困ったこと」のそばにあることを思いました。(技術科 沼田 和也)






