麦茶は振ったら本当に美味しくなくなるのか

「研究に終わりはない」
これは1年生の吉田さんの、夏休みの自由研究です。
きっかけは、落としたペットボトルだったようです。拾い上げたら、麦茶が泡立っていた。それを見て、幼い頃に誰かから聞いた言葉を思い出したとのことです。
”麦茶は振ると美味しくなくなる”
吉田さんは、当時はその意味もわからず飲んでいたが、本当にそうなのか、確かめてみたくなったとのことです。
私が惹かれたのは、この入り口です。落ちたペットボトルの泡は、誰でも一度は見ているなんでもない光景です。しかし、「本当にそうなのか」と問い直されました。これが吉田さんのすごいところだなと思います。本当の探究とは、たいてい大げさな器具からではなく、こういう小さな引っかかりから始まるのではないかと思うのです。彼女の仮説は、二つに分かれていました。一つ目は麦茶の成分そのものが変わるのではなく、味の薄い泡ができるから、味が変わったように感じるのではないかということ。そしてもうひとつは、振り方によって変わり方も違うのではないかという二点でした。そして彼女は「成分が変わる」のか「口当たりが変わる」のかというさらに仮説を立てて実験に入っています。そして味が変わったように感じる、その原因を、化学的な変化ではなく泡のせいだと見当をつけられました。実験は、家にあるものでできる実験で市販の麦茶を、弱く10回・弱く20回・強く10回・強く20回振ったものと、まったく振らないもの。それぞれの泡の広がりときめ細かさを見て、飲んで、味と香りを比べました。そしてpH試験紙を、一つひとつのコップに突っ込みました。(私は、このpH試験紙の一手は好きです)
「振っても成分は変わりません」。自分の仮説”成分は変わらないはずだ”を、試験紙で確かめられました。結果は、振っても振らなくても、強く振っても、pHは6.5で変化なし。成分は変わっていない。彼女の見当を、彼女自身の手で裏づけられたことになります。
さて、ではなぜ味が変わったと感じたのか。強く、回数多く振るほど、泡は大きく、きめ細かくなった。そして、泡がきめ細かいものほど、苦みと香りがやわらいで感じられた。彼女がいちばん美味しいと感じたのは、強く20回振ったものでした。その後彼女の仮説や実験は続いていきます。
・振美味しさは人によって違う?
かつて誰かに聞かされた「振ると不味くなる」を、鵜呑みにもせず、丸ごと否定もせず、自分の舌で測り直して、自分のぶんの答えを近づけていきました。
・泡がなかなか消えないことに気づいた彼女は、”ならば空気に触れさせなければ泡は立たないはず?”
・真空で実験するとどうなる? 水流は起きるのか?
彼女のように湧き上がる疑問、仮説、実験や検証のアイデアのプロセスをみていると、まさに「研究に終わりはない」(吉田)であると思います。一つの”答え”は次の”問い”であり、検証と問いの連鎖が生まれます。まさに自由研究の醍醐味がここにあるなと教えていただきました。(技術科 沼田 和也)






