技術の授業の面白さ

AIも、土も、真鍮も実のあるアントレプレナーシップ教育につながる
2年生の技術の授業で、いまアプリづくりをしています。英単語を覚えるためのもの、暗記に使うもの。何をつくるかは、生徒が自分で決めて設計します。少し前まで、アプリは特別な人がつくるものでした。それが今では、スマートフォンやパソコンさえあれば、「こんなのが欲しい」というアイデアさえあれば、誰でもすぐに形にできる。英検対策のアプリを、自分の勉強に合わせて自分でつくる。そんなことが中学生の手でできる時代になりました。技術の最先端に触れるAIの授業です。世の中がどこへ向かっているのか、その入り口に私たちがたっていることを実感できる授業です。
このように書きはじめると、技術科はハイテクを追いかける教科だと思うかもしれません。しかし、そうでもないのです。同じ技術の授業で、私たちは土を触ります。生物育成という必修の領域があって文字通り植物を育成するのですが、その単元ではただ植物を育てるだけではありません。京都には、すぐき漬けという伝統の食べものがあります。その食文化をどう守っていくか。地域の課題と結びつけて、生徒たちは根菜を育てています。種をまき、水をやり、肥料を考える。土の肌感覚、発芽という自然のダイナミズムに触れる感動など、画面の中ではなく、手と目で肌で匂いで確かめていきます。
また、金属の授業もあります。旋盤という機械で真鍮を削り、自分だけのドライバーをつくります。デザインは自分で考える。「こんなドライバーがほしい」「こんな商品がいい!という頭の中の考えをCADで描き、スライドで発表するという活動だけでは終わりません。本当に金属を削り出して、形にするのです。真鍮は、削る前はすんでいます。削っていくとみるみるいつに磨いていきます。削り終わった材料を、磨けば磨くほど、光沢が出てきます。手は真っ黒になりますが、その黒くなった手の苦労が、そのまま作品の輝きになって返ってきます。金属とはこういう性質のものなのだと、説明ではなく自分のからだで知ることができます。
最先端のAIと、土と、真鍮。ずいぶん違うものを、私は同じ授業のなかに詰め込んでいるように見えるかもしれませんが、どれかひとつだけでは足りないと思っています。机上のアイデアで終わってしまうビジネスコンテストではもったいないのです。より実のともなったアントレプレナーシップ教育を実現しようと思えば、いろいろな角度からのアプローチを組み合わせないといい教育にはならないのです。アイデアをすぐ形にできる便利さも知ってほしいし、土から根菜が育つ時間も、金属が硬くて簡単には言うことをきかないことも、手の感触を通して知ってほしい。どちらが上ということはありません。両方に触れて、「これはおもしろい」と思ってくれたら最高です。(技術科 沼田 和也)






