終わりのない問いとしての自由研究

美学と価値観に注目したアプローチ
自由研究(探究学習)とは、単なる調べ学習にとどまらず、誰も答えをもっていない終わりのない問いに向き合い、自分なりの答えをつくりだしつづける過程であると思います。
重本さんの自由研究「なぜ千利休は自害したのか」も、まさにその実践の一つでした。自らテーマを設定し、データを収集し、仮説を立てて検証を行う中で、自分自身の考えを深めていかれました。
以下、重本さんの研究の出発点
「私が立てた仮説は、利休の考える茶との価値観の違いによって自害に追い込まれたのではないかということです。千利休は1522年に和泉国で生まれます。52歳で信長の茶頭になり、豊臣秀吉と茶による交流を深めていきます。
そして1591年に秀吉の命令によって切腹、70年という年を自害という形で閉じます。その人生の中で利休は待庵という千利休史上最高傑作である茶室を作り出します。
フィールドワークとして私は大山崎町歴史資料館とふじのくに茶の都ミュージアムという2つの施設に行きました。そこで分かったことは縦目楼という茶室と比べても待庵はとても質素で他とは一線を画すものであるいうことです。
私は他の人の意見を知ろうと利休の伝記を読み、さらに自分で利休の気持ちを知ろうと待庵の模型を作ってみることにしました。模型を作って分かったことは原寸大の人形と比べても簡素で、本当に茶を楽しむだけの部屋なのだと感じました。
この研究を通して利休は秀吉が求めた古い茶を手にかける前に最高の茶室である待庵を残して去りたいと思ったからだと思います。」
重本さんは、ご自身の仮説を検証すべくさまざまな博物館を訪れ、専門家との対話をとおして深めておられます。そして、茶室の模型を製作して、実感に近い想像力を使ってご自身の問にアプローチされています。
自ら行動する中で生きた知識や体験をとおして想像力を含めた考察を豊かに展開されたすばらしい自由研究だと思いました。(技術科 沼田 和也)



