一点透視図法で建築を把握する

ロジカルにかけてしまう不思議なスキル
「絵が苦手」と思っている人は意外に多いのではないでしょうか?筆者もそのひとりです。苦手意識はたいてい、幼い頃に植え付けられるのだと思いますが、「上手に描けなかった」、「誰かの絵と比べられた」など、そういう小さな傷が積み重なって、自分の表現に対する自信が、静かに失われていく気がします。
一点透視図法を生徒に教えながら、ふと思ったことは、この技法はそういう人への助け舟になるかもしれないということです。一点透視図法のルールはシンプルです。垂直な線と水平な線以外の線は、すべてひとつの点(消失点)へ収束させる補助線で立体を重ねていくだけなのです。たったそれだけで、自己表現は問われないし、センスも問われません。法則に従えば写実的な空間が紙の上に現れてきます。右脳で描くのではなく、左脳で描く感覚に近いと思います。「(私が)、何を考え、どう見えているかの表現」ではなく「どうなっているか」を理解してロジカルに描くのです。だから、絵が苦手な人にこそ、透視図法は開かれていると言えるのではないかと思いました。
しかしながら、ロジカルな手順を踏んで線を重ねたにすぎない絵が、次第に空間の見え方に深みを持たせてくれるようになるのです。廊下の天井が収束していく先を、無意識に探すようになったり、建物の角から伸びる線がどこへ向かっているかが気になりだしたりします。法則を知った目は、もう法則を知る前の目には戻れない感覚になります。
そして不思議なことに、法則に従えば描けるという自信が積み重なると、失っていたはずの何かが戻ってくる気がします。「私」を出してもいいのだという感覚が、その空間にいる自分に宿った時、「この場所の魅力を、誰かに伝えたい」という気持ちが静かに生まれてくるのではないか。技法とは、世界を見る新しい道具を手に入れることなのかもしれないと思いました。(沼田)
【参考】
デビッド・ケリー 自分のクリエイティビティに自信を持つ方法 How to build your creative confidence | David Kelley
本ページ下方の生徒作品写真は二点透視図法で書いてくれたもの
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