私たちの赤は同じ色か

中学生の探究が拓く教育心理学への扉
中学2年生の川合さんは「私たちの赤は同じ色か」というテーマで探究されました。一見すると素朴なこの問いが、心理学・生理学・教育学を横断する深い問題が潜んでいます。川合さんの研究は、赤色をめぐる三つの層を丁寧に扱われていました。第一に、赤を見ると脳が興奮し、自律神経が刺激されるという生理的側面に注目していること。第二に、アドレナリンという“やる気スイッチ”への着目。第三に、調査に基づく世代によって異なる赤のイメージ——情熱、太陽、炎、危険、バラ、スイカなど。
単なる「赤は目立つ色」という一般論にとどまらず、身体反応と意味づけを往復させながら、色の”主観性”に迫っている点が非常にユニークであると考えました。この研究は、おもしろいところで、もし、「赤=危険」と連想する人と、「赤=情熱」と連想する人がいるとしたら、同じ赤い掲示、同じ赤ペンの強調、同じ赤い注意書きが、全く異なる心理状態を生み出している可能性があります。次に、色の連想(赤=危険/情熱など)の個人差は、学習への影響を媒介するのか?という疑問も生まれてきます。教育現場では、私たちはそれほど意識せずに色を使っています。その色が「誰にとってどんな意味を持っているのか」を、意識して使うようになるならば、もっと質の高いデザインをつくることができるのではないでしょうか。
川合さんは「赤はやる気を出す色だ」という単純な結論に向かわずに、同じ色を見ても実は違う景色を見ているのではないかということを調査を通じて提示しています。色から始まるこの探究は、他者理解の研究であったと言えます。今後、色連想を尺度化する試みとか、学習場面での不安や集中度の測定、教材の色設計と学習成果の相関関係の有無など様々な方向へすすまれると思います。実に楽しみな問いを提示していただきました。(技術科 沼田 和也)



