道具と出会い

先人達の発明プロセスをトレース
3年生は今、テーブルタップ(電源タップ)の製作に取り組んでいます。組み立て工程のなかで、何度もつまずき、練習しなが「できた!」となるのですが、今回は「コードの被覆を剥ぐ」作業を中心に、その学びの様子を紹介します。
プラグやタップとコードを安全に接続することこそが、テーブルタップ組立の基本となります。ビニール線の中の芯線(導線)を傷つけたり切ってしまうと、許容電流量に関係して発熱の原因にもなりかねません。だからこそ、神経を注いで丁寧に作業します。ところが、これがなかなか難しいのです。ニッパーでやってみて初めてわかるのですが、ほとんどの人が最初はコードごと切ってしまいます。難しいのは、ニッパーを程よい加減で“甘噛み”することです。強く握ればコードを切断し、緩く握ればビニールの表面を滑ってうまく剥がせません。
「最初は中の導線も一緒に切ってしまっていたけれど、練習するごとに上手くなれました。本番は一本も切らずに全ての作業ができたのでとても嬉しかったです。友達と協力しながら作ったのでとても嬉しかったです」
という生徒の感想がそれを物語っています。ニッパーでの苦労を体験したあと、知恵と工夫のつまった道具、ワイヤーストリッパーの登場となります。被覆を剥いでいくしくみはこうです。
1 剥ぎたい部分のビニールのみに切込みを入れる
2 コードをしっかり掴む
3 ビニールを引き剥がす
ニッパーではこの1→2→3の場面で、材料を持ち変えたり力の入れどころを変えたりしなければなりませんでした。ところがワイヤーストリッパーは、それら全ての工程を「片手で握りこむ」という動作ひとつでできてしまいます。誰がやっても、同じ動作で、確実に被覆だけを剥がせる。そのような機構がその道具には入っています。その道具を使って作業をすることこそが、だれでも確実な作業が可能になり、言い換えれば、安全性が道具の機構の中に埋め込まれているのです。
「何これっ!えっ、うそー!」
「すごい!」
そして次には、「なんでもっと先に教えてくれなかったの!」と大騒ぎになります。ニッパーだけでの「困った」を実感しているからこそ、この道具のすごさに驚くことができると思います。 その一つひとつの道具には、「誰がやっても同じ」「確実に作業が行える」という安全への思いが、詰まっています。それは、先人たち「困ったこと」の末に到達した知恵と工夫と言ってよいと思います。
この作業を通して、先人たちとつながり、彼らのアイデアの道すじをなぞる経験でもあります。一本の線を剥ぎ、しっかりと締める。その中で、3年生のみなさんが道具に込められた知恵に出会ってくれていることを、とても嬉しく思っています。(沼田 和也)






