すぐき漬けプロジェクト:本物の探究活動
学校のカリキュラム探究としてのプロジェクトではなく、本当に社会課題にアプローチするすぐき漬けプロジェクト
本日の全校生徒の放送で、すぐき漬けプロジェクトの高橋さんと和田さんがすぐき漬けプロジェクトについて説明してくださいまいした。
こんにちは。高橋です。
授業以外での学びということで、わたしたちが行っているすぐきプロジェクトについてお話ししようと思います。
皆さんはお漬物は好きですか?浅漬けや、キムチ、福神漬け、奈良漬、ご飯によく合うと思います。お弁当に入ってるという人はいるでしょうか?
すぐきプロジェクトのすぐきは、京都三大漬物の一つのすぐき漬けです。すぐき漬けはカブの仲間のすぐき菜で作られます。発酵しているため、酸味のあるうまみたっぷりのお漬物です。酸味と言われると少し意外なようにも感じますが、すぐき漬けはご飯にもよく合います。また、ピザやパスタ、ホットドッグなど洋食にも合わせられます。さらに、ラブレ菌という乳酸菌もふくまれていて、お腹にも良いです。ラブレ菌ヨーグルトのコマーシャルを見たことがある人もいると思います。
すぐき漬けの歴史についても少し。今から約400年前の桃山時代に、諸説ありますが、上賀茂神社の社家(しゃけ…神社に仕える氏族)が屋敷の中で栽培したのが始まりとされています。上賀茂神社は京都市北区にある神社で世界遺産にも登録されています。江戸時代には上賀茂の社家が上賀茂の特産品として、洛中の上流階級の人への贈り物として贈り、また、上賀茂神社周辺の農家でも作られるようになりましたが、他の村への持ち出しが禁止されていたためか、現在でも上賀茂の地域でほとんどが作られています。
そんな歴史あるすぐき漬けですが、現在ではすぐき漬けを作る農家の数が減り、すぐき漬けは絶滅の危機に瀕しています。そこで、すぐき漬けをリバイブ!復活させようということを目標にすぐきプロジェクトが始まりました。
teamsや、2週間ぐらいに一度のzoomを使ったミーティングで、すぐき漬け復活のためのアイデアを考えたり、進捗を報告したりして活動しています。現在すぐきプロジェクトでは、YouTubeやInstagramなどのSNSを使った発信やすぐきを使ったレシピや豆知識のデジタルブック発売、オリジナルグッズの販売などの活動が進行中です。
最新のミーティングでは、地域に密着した商品を作ったり、地域活性化を行っている事例を調べて、そこからすぐきプロジェクトではどんなことをしたいと思ったか交流したり、アイデアを出したりしました。
中学生ならではのアイデアであることが大事なのではないか、地域の人と交流したら良いのでは、給食や病院食に活用したら良いのではないか、すぐきの良さやを生かすことが大事なのでは、、などという意見から鴨川すぐき畑や、幼稚園や小学校ですぐきを育てて食べてもらう、すぐきの絵画コンテストなどさまざまな面白い案がありました。これらの中から何か実現したいなと考えています。
それでは実際にすぐきプロジェクトで活動している和田さんに話していただきます。
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「こんにちは、和田です。
私はすぐき漬けプロジェクトでグッズ販売の企画を行なっています。グッズ販売の企画は、すぐきの売り上げが少しでも上がるためにグッズで知名度を上げようと思いついたので始めました。
今は『スズリ』というサイトですぐきTシャツやキーホルダーを売っています。技術室の近くにこのTシャツが置いてあるのはご存知でしたか?
グッズを考えるのはとても面白いし、それがどのように役立つかを考えるのもとっても楽しいです。
これからはすぐきを売っている人たちとも連携してグッズ・すぐき共に売れるようにしようと思っています。思いついたアイデアは活かしたいです。
こんな企画を考えることで、学校の外と繋がりができるだけでなく、大人になった時にすぐきプロジェクトの経験を活かせる時が来るかもしれません。マーケティングの経験にもなります。マーケティングの意味はすぐきプロジェクトに参加しているうちに多分わかるんじゃないでしょうか?
少しでもこんな活動に興味や面白さを感じたなら、いや、感じていなくても一度、このすぐきプロジェクトに参加してみませんか?いつのまにか面白くなっていたり、学校の思い出になるかもしれませんよ? 以上です。」
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私たちすぐきプロジェクトの活動は、本当に起きている社会の課題に自分たちの行動でアプローチする活動です。この世界で起きている事実に自分も関係していると自覚して、その事実から問題を認識し、解決しようとすることが、事実を知った次のステップになると思います。社会で起きていることを知るだけではなく、知ったことをきっかけに、和田さんもおっしゃっていたように将来につながる経験をしてみませんか?
何を問題と捉えるか、そしてそれに対するアプローチも自由です。自分で問題を捉えることは、自分の興味を見つけることでもあって、そしてそれを追求していくことで、自分だけの道を作っていくことになると思っています。
将来につながるとかなんだっていっていてもよくわからないと思うので、是非、今日の7時からzoomでミーティングをするので、是非!覗いてみてください。zoomのリンクなどは学習ポータルサイトなどにあります。一緒にすぐき漬けを盛り上げましょう!
この生徒たちのすごいところは、授業の枠で生徒がやっていのでもなければ、クラブでもありません。成績の点数やトーナメントの結果というものが動機になっているのではなく、京都の食文化の一つであるすぐき漬けを真ん中にゆるく集まって、社会課題にアプローチしています。探究というパッケージを作って、そのパッケージに生徒がのっかっていくような茶番の教育活動ではないということろが、すごいなあといつも感心しています。
最初は授業がきっかけ
2020年、すぐき農家の森田さんが相談に来られました。京都の三大漬物の一つであるすぐき漬けの消費が落ち、伝統的なやり方で作っている農家も数えるほどになっていて、どうにかしたいという内容でした。まずは若い世代にすぐき漬けの味を知ってもらうことから始めましょうということになり、技術科の授業ではすぐきの栽培実習、家庭科では漬物を授業内容として取り扱い、美術科では「すぐき漬け」・「京都」とパッケージ・デザインを結び付けた発展的課題が提示され、生徒たちのユニークなパッケージ・デザインが提出されました。家庭科では、実習で栽培したすぐきを使ったメニュー開発に取り組み、各家庭で楽しんで作られている様子の動画やレシピが提出されました。
正課外で完全な有志でプロジェクト始動
授業外の枠である学びプロジェクト(まなプロ)では、学年をこえた有志が集まり、農家の森田さんのレクチャーや、すぐき漬けを絶やさないアイデアの意見交流がなされました。それがすぐき漬けプロジェクトの始まりでした。最初のうちは教員から話題を提供し、アイデア交流を月2回程度のペースで行っていましたが、次第に生徒たちの進行に変わっていきました。「私たちは今どこにいてこれからどこに向かおうとしているのか」、「もっと運動のペースを上げるために必要なこと」などを話し合いながら、完全に生徒(Sさん)が核となってミーティングを含めた運動を作り上げてきています。具体的な活動内容(外部への発信)の一部を以下に紹介します。
*すぐき漬けホームページ(HP):STUDIO(ノーコード)を使って、大規模なWEBサイトを作成。各SNSでの取り組みを集約するプラットフォーム的な機能、すぐき漬けの歴史を学べるサイトなど。https://preview.studio.site/live/rROnnYmjOA
*Youtubeチャンネル:「すぐきッチン」チャンネルを作りすでになんちゃってYoutuberとして活動を始めている。すぐき漬けだけでなく、生のすぐきを使った料理を行い、試食、食レポまで行う。
*LINEスタンプ:すぐき漬けキャラクターをデザインし、LINEスタンプとして販売予定。
*デジタル書籍すぐき漬け活用レシピ本:原稿は完成しており、Kindleにてデジタル書籍発行予定。
*ドキュメンタリー動画作成:畑でのすぐきの栽培、漬け込み作業など、すぐき漬けができるまでを記録動画にした。
*グッズ販売:すぐき漬けをキャラクターにしたTシャツ、キーホルダーをネット販売中。
*その他SNS関係:Tiktok、Instagram、Note、CookPadでの情報発信
京都パン屋さんと新メニューを交渉中
活動は瞬く間に展開され、広報費用の捻出のためLINEスタンプやデジタル書籍の出版、sugukiキャラクターの雑貨(Tシャツや小物)販売をとおした収益化を考えているようです。
生徒がハンドルを握るプロジェクト
最近では、自分たちが関わっているすぐき漬けプロジェクトのミッション、”すぐきをもう一度活気づくために必要なもの”、中・長期的ゴールと短期的ゴールの設定、ゴールまでの各ステップの設計などをテーマにして生徒たちが真剣に討論しています。そしてその進行を司る(フォーマルには決まっていない)生徒は、参加者の話しやすい雰囲気づくりとその手立て、進行のテンポなどに気配りをしており、教員がやるよりも深くミーティングがなされていることに毎回驚いています。各取組の検証の場面では、自己満足の側面をお互いに受容しつつも活動の意味や価値の検証も行っています。大人の立場からすれば、「あ、その言い方は辛辣では?」と思う場面はありますが、ミーティングでは普通に吸収され価値づけに取り入れられていくので、驚きの連続です。HPの試作の発表が会ったときにも、「(要約)そのHPは、自己満足であり、すぐき漬けに関わる人たちがリンクを貼ったり自然と集ってこれるようなプラットホームにはなっていないのでは?」など発言があった時は、はらはらしました。生徒がハンドルを握るチームミーティングで毎回いろいろなことを学ばせていただいています。(沼田)