2025年1月10日、国立天文台三鷹キャンパスで研究をされている堀安範さんが来校されて、宇宙について、とくに今回は惑星をめぐるさまざまな研究についてお話してくださいました。
国立天文台は、日本の天文学研究の拠点となる研究機関です。大規模な天文観測施設を持ち、天文学研究と天文観測機器の開発を広く推進しています。今回の学びプロジェクトは、国立天文台が主催する出張授業「ふれあい天文学」に本校が応募して実現しました。サムネイル写真内のスクリーンの映像は、ハワイ(ハワイ島マウナケア山頂域)にあるすばる望遠鏡の観測の様子です。
*国立天文台ハワイ観測所
https://www.nao.ac.jp/research/project/hawaii.html
*すばる望遠鏡公式サイト
https://subarutelescope.org/jp/
この写真は、紫金山・アトラス彗星とすばる望遠鏡(中央)を撮影したものです。(同サイト)
<天の川>
堀さんは、最初に富士山の上に見える天の川の写真を見せてくださり、天の川は夏と冬に綺麗に見えること、私たちの生きる地球は天の川銀河に存在しているが、天の川はバームクーヘンのような形をしていて、太陽系はその隅にあるので、私たちは天の川を見ることができるそうです。
そして、45ー55億年後、アンドロメダ銀河とぶつかるという少し怖い事実を紹介されました。けれども、銀河の中は広大な空間が広がっているので、おそらく地球はどの星ともぶつからず大丈夫ではないかと予測されているとのことで安心しました。
<地球の衛星、月>
最も近くにある星、月について、45億年前、地球と何かがぶつかって、地球の破片が1ヶ月後に月になったという巨大衝突説(ジャイアントインパクト説)を紹介されました。月ができた当初はもっと地球に近かったため、月は今より400倍大きく見えたと言われています。月との重力の関係で、潮の満ち引きがあることの他にも、月と地球は1年で4センチずつ離れていること、地球の1日は少しずつ(人が認識できないごくわずかの時間ずつ)長くなっていること、ウミガメやサンゴは新月や満月を認識できること、互いが引っ張り合っている月の裏側が見えないことなども紹介されました。
<太陽系惑星について>
さらに、太陽系の8つの惑星は、地球を含めて太陽に近い4つの惑星は岩、次の木星と土星がガス、遠くにある天王星と海王星が氷でできています。その衛星たちの研究も進んでいて、例えば、月は地下に空洞があって、氷(水)も存在している可能性があること、木星の衛星エウロパ(ヨーロッパ)には液体の水が存在していること、エンセラダス(ギリシャ神話の巨人の名前から)にも氷が存在すること、タイタン(巨人)にはメタンやエタンの液体が存在していること(メタンやエタンは地球上では一般的には気体で存在している)など、いろいろな衛星について紹介されました。
<TMTプロジェクト>
国立天文台の今後の計画として、TMT (Thirty Meter Telescope)プロジェクトを紹介してくださいました。名前の通り、30メートルの直径を持つ天体望遠鏡を作って、さらに宇宙を詳しく観測できるようにしようという計画です。ハワイに新たに1台、鏡の直径が30メートルのものを作る計画です。望遠鏡の鏡が大きいほど、多くの光を集めることができて、宇宙から飛来する光を集めることで宇宙全体や宇宙の始まりをより正確に研究することができるようになります。この鏡は1枚で作ることは不可能で、高さ144センチの正六角形の鏡492枚を合体させて作られます。
詳しくは、ぜひ以下のサイトをご覧になってください。
*国立天文台TMTプロジェクト https://tmt.nao.ac.jp/
TMT(30メートル望遠鏡 完成予想図 同サイト)
その他、人類が火星に行く話、最も近い恒星ケンタウルス座に探査機を飛ばす計画(20年かかる)、蒸発している惑星(段々小さくなっている)、灼熱の岩石惑星(石が蒸発している)、太陽系の太陽は実は双子(2つある)や3つ子になる可能性が高いことなどさまざまな話題にふれてくださいました。
講師の堀さんは、大学生までは物理の研究をされていたのですが、21歳の時に宇宙に興味を持たれて、惑星科学の研究の分野に進んでいかれたそうです。
中学生の皆さんには、ぜひいろいろな体験をされ、ご自身の好きなこと、得意なことを見つけてほしいというメッセージを最後にお話してくださいました。
中学生の皆さんからは、講演の途中や後に多くの質問があり、堀さんは1つひとつ丁寧に答えてくださいました。
ぜひ来年度も実施したいと思っています。
(数学科 園田毅)