2023年10月7日(土)、大阪大学大学院工学研究科・生命先端工学専攻物質生命工学コース(吹田キャンパス)を1-3年生28名が訪問しました。今回の訪問先は菊地和也研究室です。
研究室では、世界で注目されているケミカルバイオロジー(Chemical Biology)と名付けられた分野を研究されています。ケミカルバイオロジーとは化学を用いた生物学研究です。複数の分野(化学、生物学、物理学)の研究者が集まって、研究をすすめておられます。
3グループに分かれ、お話、実験、研究室見学を体験しました。菊地さんは蛍光の原理のご説明から研究内容の説明がありました。医療分野で例えばがん細胞だけを蛍光物質で光らせることができれば病原に対してより的確な治療が可能になります。
光を当てられた原子中の電子がそのエネルギーを吸収し、「励起状態」(excited state)になると同時に元の状態に戻るときに発光することです。蛍光の色は各元素特有で決まっています。(右写真) この性質を利用して、研究のひとつとして、破骨(はこつ)細胞の動きの研究(骨粗しょう症になる原因)を紹介されました。
研究施設では、大学生、大学院生、研究員の皆さんが、いろいろな器具を紹介してくださり、いくつかの実験も見せてくださいました。下の写真は、容器内の空気を薄くして溶けている物質を取り出す(蒸留)装置を説明されている場面です。参加者の皆さんも活発に質問されていました。
その他、物質を混ぜてさまざまな色の蛍光を作りだす実験もさせていただきました。(写真左)
また、実験室にある水素で風船を作ってくださり、お祭りなどで私たちが見るヘリウムが入った風船よりも勢いよく上昇する様子も見せてくださいました。(写真右)
別の実験施設では、研究に必要な高額な装置が置いてあり、それらも見学しました。
下の写真は、NMR装置(核磁気共鳴)による物質を分析する機器です。病院でMRIによる検査を受けた方がおられたら、それと原理は同じです。強い磁石と電磁波を使って、物質内の状態を断面として把握することができます。この部屋の中には、分子の質量を計測する機器もありました。この機器は、高分子物質の質量を計測する装置です。小さな物質の質量を測るのはとても難しいのです。余談になりますが、2002年、島津製作所(京都市内)に勤務されていた田中耕一さんがノーベル化学賞を受賞されたのは質量計測の手法の開発でした。
分子の質量を計測する機器です。(左写真)
右の写真は、顕微鏡で細胞を見ています。
菊地さんはお話の最後にご自身の経歴を紹介されました。東京大学をご卒業後、一般の会社に就職されたが1年で退職されたこと、その後、アメリカに留学して感じたことをお話されました。
- 自分が何に向いているかはなかなかわからないこと、自分のポテンシャル(持っている力)の上限を自分で決めつけないこと、自分を飾るような見せかけの言動はあとで自分が傷つくこと(Hype only hurts.)、高い目標を持つこと、また、エジソンの名言は日本で「天才は1%のひらめきと99%の努力である」が最も有名ですが、この意味「100回新しいことに挑戦して(99% effort)1回うまくいけば天才である」と解釈している研究者は多い。そこで、天才ではない私たちであれば1万回のトライで1回うまくいけば大成功であろう、中学生の皆さんはあきらめずにがんばってほしい -
というメッセージを送ってくださいました。
お忙しい中、ご説明、ご案内してくださった皆さん、ほんとうにありがとうございました。
(数学科 園田毅)