生態系サービスを活用したサスティナブルな地域づくりへの挑戦
2022年7月23日(金)、徳島大学大学院社会産業理工学研究部准教授の河口洋一さんから「生態系サービスを活用したサスティナブルな地域づくりへの挑戦」と題して、希少動物と保護活動について専門家にお話を伺いました。中学生15人が、講演、交流に参加されました。
<生態系保全のモデルケース>
河口さんは最初に、カナダでのサケの保護のとりくみを紹介されました。アンカレッジ、キングサーモンをめぐる生態系を保全するプロジェクトです。カトマイ国立公園、Brooks fallというところで、人数制限、厳しい衛生ルールをサケの資源管理を人間側に課して、自然環境の保全を優先するモデルケースでした。
I部 コウノトリが教えてくれたこと
コウノトリは元々日本全国の水田で普通に見られた鳥なのですが、乱獲や環境破壊によって、日本では1971年に絶滅しました。その後、兵庫県豊岡町が1985年よりロシアから幼鳥をもらい受け、人工繁殖のとりくみにより、個体数が増え、2005年からは放鳥により野生での自然繁殖を促進する事業が進められています。
このように、コウノトリは兵庫県豊岡町での人工繁殖が有名になりましたが、さらに繁殖の拠点を増やしたいということで、2017年から徳島県鳴門市がとりくみはじめ、河口さんも関わって中心的な役割を果たしておられます。コウノトリの繁殖には水田が多い、斜面が緩い、森林が少ない場所がよいそうです。日本の平野部の水田を中心とした農村部はまさにコウノトリに適した場所だったのですが、近年、耕作放棄地が増えているため、そこをビオトープにすることにとりくんでおられます。ビオトープを作り、維持するためには例えば農薬を使わない米作など地域の理解や、里山づくりなどの環境整備に地域の多くの人々の協力が必要になります。河口さんは研究者として活躍されるとともに、さまざまな分野の人たちをつなぐ役割も果たしておられます。
II部 風力発電と希少猛禽類オジロワシの共生
河口さんは風力発電の風車のスライドを紹介した後、国内に設置してある風車にオジロワシが衝突する映像を見せてくださいました。スペイン、アメリカでもハゲワシ、イヌワシなどの希少種(絶滅が危惧されている生物)の鳥が衝突するケースが多いことを話され、この状況を技術でクリアするにはどうしたらよいか中学生にアイデアを求められました。パネルを柵で囲う、鳥が近づくとゆっくり回転するようにする、風車の羽根を高くするなど参加者から意見が出されました。
河口さんからは、世界で環境保全のとりくみがなされていて、引き続き、次の世代、中学生の皆さんへのこれらの問題へのとりくみを期待するメッセージがありました。
河口さん、参加者の皆さんとともに貴重な時間を過ごすことができました。
<参考> 特定非営利活動法人 とくしまコウノトリ基金
https://www.t-stork.jp/blog/3041/
河口さんはこの法人の理事もご担当されています。
(文責 園田毅)