越冬隊員の方から南極から見た地球温暖化を聞く
地球温暖化について専門家からお話を聞く企画シリーズです。3/22(月)夕刻、「南極から見た地球温暖化」と題して、南極越冬隊を経験された上村剛史(うえむらたけし)さんに 20 名の中学生の皆さん、教員がお話を伺いました。上村さんは総合研究大学院大学に在学中、地学系の研究観測隊員として 2004 年から 2006 年にかけて 1 年半近く南極で観測・研究活動をされた方です。
上村さんは、その後、東京の海城中高という私立学校で理科教員をされ、現在も関西で教育系のお仕事をされておられます。今回は、南極地域観測隊のご経験と観測の中で知った地球温暖化の進行についてお話していただきました。
前半は、日本から南極へ行く手段と南極の様子をお聞きしました。日本からは南極観測船「しらせ」に乗って南極へ向かうチームと、飛行機で途中まで行って「しらせ」に乗り換えるチームがあります。飛行機も特別仕様で、車輪でなくソリで離着陸できるようになっています。「しらせ」は砕氷艦と言って、南極へ近づくと海面の氷を割って進みます。凍った海面の上に降りて「しらせ」とともに映る上村さんの写真を見せていただきました。「しらせ」は全長 134m、とても大きいです。
南極観測隊(当時約 40 名)は研究者に限らず、医者や技術者などいろんな役割の人がいます。
学校の教員も応募することができるそうです。また、上村さんが行かれたとき、女性は 2 名でしたが、段々女性の割合が増えて来ているとのことです。
南極越冬隊の皆さんは、オーロラ、気象、氷、生物などいろいろな役割を持って日々の生活をこなしています。ペンギンなど動物たちの写真や昭和基地付近の写真も見せてくださいました。昭和基地は、南極では暖かい場所にあり、夏(日本の冬)は氷が解けて地表が見えます。
続いて、上村さんは南極と地球温暖化について話をしてくださいました。南極での観測は、私たちが普段生活しているところと違う場所、地球の「極地」で行っていることに意味があります。上村さんは「『地球環境の窓』としての南極観測」の大切さを話されました。南極での二酸化炭素濃度は他の場所と比べて、生物(植物)が少ないので季節的な変動が少ない特徴があります。また、南極の氷を調べると、過去の時代の空気中の二酸化炭素濃度を知ることができます。氷を掘削する様子も写真を見せていただきました。オゾンホールの拡大についても触れられ、1980 年代ごろから大きくなってきたが、国際的な解決を図る中で、21 世紀に入って拡大は止まっているということでした。
その後、中学生の皆さんからの質問を受け付けました。皆さんからの質問は南極という行ったことのない場所への興味・関心が高く、南極で食べられないもの、ケガや病気になったらどうするか、曜日がわからないようになったりしないか、南極で気温上昇はあるかなど予定の時間を大幅に超えて交流することができました。
南極へ行ってみたいと思った中学生の皆さんはぜひチャレンジしてほしいと思います。
貴重な機会をくださった上村さん、ほんとうにありがとうございました。
(文責 園田毅)