人類の課題である地球温暖化への一つの対策として、化石燃料に頼らないエネルギー開発が進められています。今回、2021年3月18日夕刻の学びプロジェクトは、九州大学教授谷口俊輔さんに、未来のエネルギーとして期待されている水素エネルギーについてお話をお聞きしました。九州大学には水素エネルギーに関する世界最大の研究拠点があり、谷口さんはその中の「水素エネルギー国際研究センター」で燃料電池の研究をされています。
小中学校の理科の実験などで知っている方も多いと思いますが、水素は元素記号でH2と表されて、燃えたら水に変化するので、石油・石炭などの化石燃料と違い、二酸化炭素、CO2を発生しません。ただ理科の実験同様、水素を作るときに電気や熱が必要な方法や費用がかかる方法だと多くの人が使えないので、今、作り方やコストなど水素エネルギーの作り方が研究されています。
谷口さんからはまず、地球上の二酸化炭素濃度が上昇していてこれを抑制し解決する技術の研究と実用化が求められていること、化石燃料(石炭、石油、天然ガス)の紹介と比較、自然エネルギーの開発状況など現状を丁寧に説明してくださいました。そして、解決手段の一つとして、研究・開発が進められている水素エネルギーの紹介、説明に入られました。
水素を燃料として走る自動車はすでに開発されていて(トヨタ「MIRAI」、ホンダ「クラリティ」など)、自治体・企業が設置した水素供給設備「水素ステーション」が全国137ヶ所あり、そこで水素を補給することができます。谷口さんはガソリン自動車、電気自動車、水素燃料自動車のメリット、デメリットを環境面、技術面、コスト面などから比較されて、わかりやすく説明してくださいました。
後半の質疑応答では、中学生から電気自動車と水素燃料自動車の違いや安全面についての質問が多く出ました。また他のエネルギー利用についての質問もありましたが、谷口さんは幅広い切り口の質問にも優しく答えてくださいました。以下に、中学生の感想・気づきコメントを紹介します。
「水素はCO2を排出しない究極の燃料だが、どうやって作るのか、貯めるのか、運ぶのかという課題は残っている。そのため、水素も重要だが炭素を含む燃料も引きつづき必要である。どのエネルギーにも、欠点はあるので多様な発電方法を組み合わせることでそれぞれのデメリットを補うことが大切だと感じた。これらのことから、多様な燃料や発電方法を組み合わせ、最適なシステムを目指すべきだと思った。」
「水素についてはあまり知らなかったのですが、とてもよくわかりました。これから地球温暖化対策として非常に便利で、よく使われるようになるんじゃないかと考えました。水素ステーションと水素自動車の関係はとても複雑で増やしにくい状況にあることがわかりました。そのために水素自動車のことをもっとたくさんの人が知り、日常的に使えるようにしていけば、この問題は解決できるんじゃないかと考えました。」
「水素エネルギーだけではなくて、他の自然からのエネルギーも上手く使ってエネルギー問題を解決出来れば良いなと思いました。まだ普及するのには時間がかかりますが、CO2を削減できる水素エネルギーが早く広まるのを楽しみにしています。」
なお、詳しく知りたい方へ、九州大学「水素エネルギー国際研究センター」をご紹介します。
https://h2.kyushu-u.ac.jp/
予定時間を越えて、中学生に優しくていねいに対応してくださった谷口さんに感謝申し上げます。
(文責 園田毅)