「飛べない鳥・ペンギン」南極観測越冬隊員上村剛史さんにお話を聞く 第2弾
2021年10月4日(月)夕刻、南極越冬隊を経験された上村剛史さんにお話を伺いました。上村さんは総合研究大学院大学に在学中、地学系の研究観測隊員として2004年から2006年にかけて1年半近く南極で観測・研究活動をされた方です。上村さんは、その後東京の海城中高という私立学校で理科教員をされ、現在も関西で教育系のお仕事をされておられます。前回、2021年3月にお話を伺ったときは「南極から見た地球温暖化」というテーマでしたが、今回は、ペンギンについて詳しくお話していただきました。
私たちがメディアを通してよく見るペンギンは、真っ白な世界、ブリザードの中、立ったままで卵や雛を温めているイメージではないでしょうか。今回、上村さんが紹介された写真の中のペンギンは雪や氷のない岩盤(営巣地 ルッカリーと言うそうです)で子育てをするペンギンでした。上村さんが紹介されたペンギンは、アデリーペンギンで、昭和基地の近くでよく見られるそうです。皇帝ペンギンは氷上で子育てをするので、メディアでの印象が強いのは皇帝ペンギンです。
スライドで、人間の近くまで寄ってきたペンギン、ペンギンの残した足跡(しっぽの跡も残って不思議な感じがします)
後半のお話は、動物として、鳥類としてのペンギンの分類と今回の主題である「ペンギンはなぜ飛べないのか?」というテーマでした。皆さんもご存じのようにペンギンは鳥類ですが、例外的に空を飛べない鳥です。(卵を産む哺乳類もいますよね?) 分類の説明に続いて、上村さんからは北海道・旭山動物園で来場者が水槽の下からペンギンが泳ぐ様子を見る写真を示されました。見たことがある方もおられると思いますが、ペンギンは翼を広げて、水中をまさに「飛んでいる」ように見えます。21世紀に入って、「バイオロギング(Bio-logging)」というサイエンスの研究スタイルが注目されています。小さなデータ記録装置を動物に取り付けて、動物の動き、行動を明らかにする研究です。この手法によって、ペンギンの水中での動き
が詳しくわかってきました。ペンギンは海の中を魚のように泳ぐのではなく、他の鳥が空を飛ぶのと同じように羽を使って海の中を飛ぶように泳いでいます。上村さんは、ペンギンは空でなく水中を「飛ぶ」ために進化した鳥と言えるのではないか、ペンギンは(空を)飛べない鳥ではなく飛ばない鳥なのだとまとめられました。
ペンギン、そして南極はまだまだわからないことが多いそうです。興味、関心を持った中学生の皆さんが、その謎を解いてくださることを期待しています。(後日、上村さんから、南極の砂をご寄贈いただきました。昭和基地周辺の岩石が風化した砂で、真っ赤なザクロ石が多く含まれているのが特徴です。理科MS(メディアスペース)に展示しています。)
貴重なお話をしてくださった上村さんに感謝いたします。
(数学科 園田毅)