石鹸、洗剤で有名な花王株式会社では、環境に配慮した商品開発が行われています。今回は、研究者として業務に関わっておられる小寺孝範(こてらたかのり)さんに洗剤と環境問題をテーマでお話をしていただきました。51名の同中生の皆さんが参加してくださいました。
最初に、小寺さんは洗剤の歴史について大きな流れを紹介してくださいました。洗剤で汚れが落ちるのは、「界面活性剤」という物質が洗剤の中に入っているからです。今から50年ほど前には、この界面活性剤が水質汚濁など環境汚染の原因となりましたが、その後の界面活性剤の品質改良や行政の政策(例えば、滋賀県の琵琶湖富栄養化防止条例制定をきっかけとした洗剤の無リン化や下水道の整備など)で、川や海の水質は改善されていったそうです。
洗剤の「一生」は、熱帯で栽培されるアブラヤシから主な原料となるヤシ油(パーム核油)が作られるところから始まり、工場で商品として生産され、消費者がご家庭で洗剤を使って排水となって捨てられるという流れになります。小寺さんたち研究者は会社全体として、原料―洗剤の生産-家庭での使用―廃棄という洗剤のサイクル(「ライフサイクル」と言います)すべてに目を向け、アブラヤシの栽培環境の保全、洗剤や容器の改善、ご家庭で使用する際の水量をできるだけ減らす工夫を継続して進めておられるとのことでした。
今、この洗剤のように、原料、輸送、商品生産、消費、処分・リサイクルといったその商品に関わるすべての活動で出る二酸化炭素の量等(環境負荷)を計算し、できるだけ環境に悪影響を与えない製品・サービスを普及していくことが世界全体でとりくまれています。興味・関心を持ったかたは「ライフサイクルアセスメント(LCA)」というワードで検索して調べてみてくださるとうれしいです。
小寺さんが働いておられる花王株式会社では、RSPO(持続可能なパーム油のための円卓会議)に加盟され、アブラヤシが栽培されるボルネオ島、カリマンタン島などの環境保全に努力されたり、すすぎを減らす洗剤を開発して洗濯機メーカーに協力してもらい「すすぎ1回モード」ボタンを洗濯機に設定してもらったり、洗剤以外の商品でも使用済みおむつの再利用できる研究を進めておられたり環境を守るためのさまざまな工夫にとりくんでおられるとのことでした。
和歌山市に、花王エコラボミュージアムという施設もあります。より詳しく知りたい方は、ぜひご覧になってください。ご紹介します。
https://www.kao.com/jp/corporate/about/tour/museum-tour/eco-museum/
50名を超える中学生の皆さんが環境問題を「自分ごと」としてとらえ、本企画に参加してくださったことをたいへんうれしく感じました。未来への希望を強く感じることができました。
最後に、貴重なお話をしてくださった小寺さんに感謝いたします。ほんとうにありがとうございました。
(数学科 園田毅)