橋の構造を見抜く洞察力

「力の分解」を習うまえに自力で分析する学びの姿勢
中学2年生技術科で、ブリッジ・コンテストを行いましたが、とてもすばらしい学びのレポートがでてきました。「力の合成・分解」は3年生で習いますので、そういった基本的な事柄は未習ですが、田中綾乃さんはブリッジの強さを自力で分析し、考察してくれています。その田中さんの自力で何とかしていこうとする姿勢こそが、エンジニアリングひいては構造力学の本質に迫るものではないかと感じました。橋の形状による力の伝わり方に着目し、M字型の構造がどのように荷重を受けるのかを考え、自分で理を重ねひも解こうとされています。田中さんは、単純にM字を重ねるだけでは、圧が均等に真下に伝わるため強度向上に限界があると考え、斜めの支えとなる棒の数を増やすことで、力を横方向へ分散し、全体の負荷を軽減できるのではないかという仮説をもとにブリッジを製作し、 自重3.2gに対して、6100g(約1906倍)の荷重に耐える というすごい成果を出しました。
さらに田中さんは、自身の橋の強度を確認するために、実際の吊り橋と比較されました。「吊り橋は重さに耐えるのではなく、しなやかに受け流す構造である」という結論に至っています。このように、実験結果を単なる数値として終わらせるのではなく、現実の構造物と比較しながら理解を深めようとする姿勢を拝見して、学んだ事柄が自分自身の体をくぐりぬけて、それが生きた知識となっているのではないかと思います。「もう一度橋を作り、自分の工夫が結果に繋がっていたのかを確かめたい」という田中さんの探究心はとても素晴らしいなと思いました。今回の挑戦を通じて、数学や物理の知識が単なる教科の枠を超え、技術科での実習を通して、学校の学びが実社会にどのように応用されているのかというつながりをも獲得されたのだと思っています。3年生で学ぶ「力の合成・分解」の先行体験としての価値が高いブリッジコンテストとなったことは想像に難くありません。
同志社中学校では、生徒が自ら問いを立て、実習を通して考察を深める学びを大切にしています。中学に入学されたときには、たくさんの「なぜ?」を大事に蓄えていただいて、同志社での学びを経て、ご自身の未来の可能性をひろげていってほしいと思っています。(技術科 沼田和也)


