2024年3月9日、(株)山本忠信商店(ヤマチュウ)で働く若手、髙島千聖(たかしまちさと)さんが、「パンと小麦」をテーマにいろんなお話をしてくださいました。髙島さんは京都出身で立命館宇治高校から立命館大学文学部へ進学され、新卒では経営コンサルの会社に就職された後、現在の会社に勤務されています。
(1)国産小麦について
髙島さんが働いておられるヤマチュウは北海道十勝地方にある音更町にあり、農家の方と直接契約で、小麦や豆類の流通をはじめ北海道の農業に携わっている会社です。皆さんもよくご存じのパンや有名な和菓子などにも使用されています。髙島さんは、北海道産小麦粉の関西方面への販売営業と、ヤマチュウのグループのベーカリー、「THE STANDARD BAKERS阪神梅田本店」の運営を担当されています。
日本の小麦の自給率は2割程度、パン用小麦ではたった4%しか国産小麦は使用されていないそうです。(この自給率の低さはたいへんなことです)国産小麦の6割が北海道で生産されています。髙島さんは、日本の農業、農家を応援したいという会社の理念も紹介してくださいました。
(2)薄力粉と強力粉を触って当てる
髙島さんが持参された2つのタッパーには、強力粉と薄力粉が入っています。参加者の皆さんも実際に触ってみてどちらが強力粉なのか当てます。多くの方が、サラサラしている方を薄力粉と考えて答えるのですが、実は反対で、サラサラしている方が強力粉、ギュッとつかむと固まるのが薄力粉です。強力粉のさらさらしている感触は小麦の質が硬いことが理由です。また強力粉はグルテンが多く、パン生地はグルテンが空気を閉じ込めて膨らむので、パンに向いているということになります。
(3)小麦の品種と栽培の紹介
ゆめちから、きたほなみ、みのりのちから、キタノカオリ、はるきらり、春よ恋、これらは全て小麦の品種です。それぞれパン用、うどん用など用途が違っています。
小麦の生産は、9月から7月まで10ヶ月かかります。これだけでもたいへんですが、お米同様、収穫後も籾殻を取り除いたり、小麦の粒を砕いてふるいにかけたりと、小麦粉になるまで多くの作業があります。削り具合で、1等粉、2等粉、3等粉に分かれます。籾殻を取っただけの茶色い小麦の粒を触らせていただきました。
(4)進路選択に迷った髙島さん
髙島さんから中学生の皆さんへのメッセージとして、高校、大学時代の話をしてくださいました。高校時代、学業、クラブ活動を一生懸命されていましたが、やるべきと思っていたからやっていた、受動的だったと振り返られて、周りの同級生が自分の好きな学びや進路を考えて「尖って」いるのに、ご自身は学部志望に悩み「平均」的だったと話されました。高校の授業で学んだ「里山資本主義」(藻谷浩介・NHK広島取材班著)という本が印象に残り、大学生になってこの本で紹介された離島のジャムづくりを経験されたり、北海道へ農業インターンをされたりして、自分のやりたいことを見つけられたとのことでした。高校時代の後悔は留学へ行かなかったこと、中学生の皆さんには自分自身の向き不向き、強み弱みを知るために
もぜひいろいろやってみてほしいとのことでした。その中で、ワクワクすること、やってて楽しいことが見つかるだろうとアドバイスしてくださいました。
参加された中学生の皆さんにも自宅でよくパンを作っている方がおられ、品種など専門的なことも含めいろんな質問がありました。
髙島さん、貴重なお話、体験をありがとうございました。
(数学科 園田毅)