パラオ共和国(Republic of Palau)で算数・数学の支援をされている長谷川幹さんを現地からzoomをつないでお話をお聞きしました。長谷川さんは京都の公立中学校、立命館宇治、立命館守山中高で数学を教えてこられて、退職後、JICA(Japan International Cooperation Agency 国際協力機構)が募集する「シニア海外協力隊」のメンバーとして、昨2022年夏からパラオ共和国に派遣されて半年経ったところです。現地で算数・数学教育の支援をされています。15名の中学生の皆さんが参加されました。
最初に、パラオ共和国を紹介してくださいました。パラオ共和国は人口2万人、面積459㎞2、日本の場所で比べると種子島(人口2万9千人、面積444㎞2)、小規模の町くらいの国家です。首都のマルキョクは東経134度30分の位置にあり、近畿地方とほぼ同じ経度ですので、時差はありません。スライドでいくつかの風景の写真を紹介してくださいました。島内の自然も素敵でしたし、太陽が海に沈んでいく様子、夕焼けと虹、とてもきれいでした。
1920年から1945年まで日本が「委任統治領」として政治を行ったので、日本が建設した「南洋庁」の建物が現在も最高裁判所や高校として使われているそうです。また、現地では英語でコミュニケーションを取るのですが、今も日本語が通じる場面や日本語の名残りもあり「ダイジョウブ」、「モンダイナイ」などはそのまま通じるそうです。
長谷川さんは退職直前にJICA「シニア海外協力隊」に応募され、英検2級の取得、国内での研修など約2年間の準備期間を経てパラオに赴任されました。元々、中高の数学がご専門ですが、パラオでは算数・数学教育の系統的な整理が不十分な点があり、大人も含め、割り算、引き算、分数の概念を理解することが当面の課題になっています。長谷川さんは小学校算数から中高数学まで全般的に関わってサポートされておられます。長谷川さんが作成された算数・数学学習系統表が全国の学校で掲示されたり、解説パンフが発行される予定になっています。このようなサポートができるのも、これまで、学生時代も働いているときも学び・研究を積み重ねてきたからだということを最後に強調されました。
中学生の皆さんからは、長谷川さんの現地でのお仕事やパラオでの生活の様子(主食はタロイモ、言語はパラオ語ですが英語も公用語の1つ)、パラオの学校のしくみ(小学校8年+高校4年の義務教育)など、いろんな質問があり、15分余り質疑応答が続きました。
参加された中学生の皆さんからの感想・コメントを一部紹介します。
- 日本と関係が強いパラオのことが知れて良かったし、学校があまりないことにびっくりした。
- 若い頃に積んだキャリアは、のちに役立つ。
- パラオのことは何も知らなかったけど海が綺麗とか人が自由が暮らしている事を知って行ってみたいと思った。定年退職しても母国を離れて先生をしているのがすごいと思った。
- パラオの学校にシステムは日本以上に整っていると思ったため、現在パラオでやられている数学の教育でパラオの子供達はとても賢い人になるだろうと感じた。また、日本が占領していたということと共に、日本語も少し使っているということに驚いた。
長谷川さんは同志社中学校数学科の教員研修に来られたこともあり、2階数学メディアスペースには、長谷川さんが編曲された「円周率の曲」が展示されています。休憩時間、お昼休み、放課後にぜひご覧になってください。
長谷川さん、貴重なお話をありがとうございました。
(数学科 園田毅)