同志社のものづくりは丸太から!
くさびを打ち込む箸作り
技術科の授業、外村先生は丸太からはじめるものづくりこだわって授業をデザインされています。チェーンソーで切り落としたゴツゴツした丸太を割り、板にし、角材にするところから授業が始まります。楔(くさび)を打ち込み、タガネも使ってハンマーを振り下ろして丸太を割り、最終的には、オリジナルの箸として使うところまで考えています。現在、どうにか板らしい感じでわることができ、作業が早い生徒の皆さんは、箸の角材に近い状態にすることができています。
皆さんは、楔(くさび)を打ち込んで丸太を割ったことがありますか?
ハンマーを振り下ろしても1センチも木材に食い込まず、
「あかんわ、入らへん」、「もう、何やってんねん!」
「あれ、硬い!!」
くさびを打ち込むことがこんなに大変なのか、「丸太から板を作るなんて程遠い」と感じるはずです。
日本の技術科の授業では、すでに製材(板や角材にする)された木材を使って、何かしら作品を作ることは多い。日本の学校では、学校行事でさえ日曜大工センター、ホビーセンターで製材された木材を「買ってきて」大道具を作ったり展示の仕掛けを作ったりします。機械で誰かが綺麗に整えてくださった木材を「当たり前のものとして」使い、本棚を作ったり、エンジン模型、建築模型を作ったりしています。製材を使ったものづくりも、ものづくりの授業には変わりませんが、外村先生はより本物の経験をこそ生徒たちに獲得してほしいと願っておられます。巷の学校では技術科のものづくりとは言えその程度のものづくりしかできていないというのが現状です。残念ですが、こういったものづくりの授業からは、「製材」という仕事の価値を感じることができません。製材という本物の体験を通して、林業の未来、森や海の自然の未来へと思いを馳せることが可能になるのです。上面だけのSDGsの取り組みにならないよう、授業設計や学校デザインを考えています。
ところで「楔を打ち込む」という言葉を聞いたことがありますか?
直接的には くさびをたたいて入れこむことですが、よく比喩表現として使います。「敵陣に攻め込み、これを二分する。また、相手方に自らの立場や勢力を強引に押し入れる。」などがそれです。口で言うのは簡単ですが、楔(くさび)を入れることの大変さを、経験を通して知っているものと、上部だけの知識で比喩表現を使って文学作品を作るのとでは、その作品に宿るAuthenticity(オーセンティシティ)は全く違ったものとなります。この外村先生の授業をへて獲得した本物の経験というものは、一生分の言葉をちからを得たのと同じことだと思います。
この授業には続きがあり、箸として作品に仕上げますが、そこには「木材乾燥」と「反り」という難問に突き当たることになります。ここでも生徒たちが獲得する本物の体験というものを想像すると、その体験から導かれる本物の感性の育ちを創造することができ、今からワクワクしてきます。同志社中学校の技術科では本物の経験を通して豊かな感性を身につけることができます。楽しみにしていてください。
(沼田)