一本のテーブルタップから未来を想像 1
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再定義が生み出すアイデア
技術科の授業はとても面白い。実際に使われている製品を教材にして、本当に作ってしまう。製作時の道具も本物の道具を使って実際に使える物を作る。その中で、科学的なこと、文化的なこと、社会的なこと、国語・英語表現だけでなく美学的なことまでを守備範囲としていて、実に総合的だからです。
テーブルタップとは別名「延長コード」などとよばれることもあります。今回の記事は、生徒の皆さんが実習として本物のテーブルタップを組み立て終わったあとの授業を紹介します。
ちまたのテーブルタップの売れ行き動向を調査したり、次世代のテーブルタップのアイデアを提案したりクリエイティブなレポートをたくさん出してくれます。いろいろなアイデアのもとをかん考えたいと思います。それは、テーブルタップを再定義するとでも言いましょうか、意味を別の角度から考え直すという思考作業を通して、実にユニークなアイデアが生まれてくるのです。
テーブルタップとは「電力を離れた場所に供給するもの」という考え方から、「癒しと遊び心を提供するもの」という考え方に変えてやることによってあたらしいアイデアが生まれてくるのでしょう。多くの生徒はインテリアとして、かわいいおもちゃの要素を付加して考案してくる生徒がいます。「コンパクトかつ移動させられて、配線をまとめられるテーブルタップ」と定義し、動くおもちゃのようなインテリアを提案してきたり、図1のように、「隠したくなるテーブルタップをかわいいインテリアに」というコンセプトでアイデアを出していたり、テーブルタップを使うとイルミネーションになるというものです。これらは既存の「癒し」とか「かわいい」を連想するものとテーブルタップの組み合わせでもあるのですが、アイデアをだしやすくするためにテーブルタップの定義に変化を加えたとも言えます。実用的かどうかをテストするための試作品までつくれるとまた面白い活動になるのかもしれません。
図3は、この発想でさらに「遊び心を表現できる」という価値をさらに付加したものでしょう。「部屋にあった色で、ブロックアートを楽しむおしゃれな展開」ということです。実際にありえるかもしれないと思わせる考案でした。
しかし、私が注目したいのは、一見空想的な夢のアイデアとも言えるこれらの提案の中に授業で学んだことが生かされていると言う点です。「もし水がこぼれても吸収性の高い糸やわたを使っているためテーブルタップは安全!」というコメントがあります。この生徒が言うような材料(糸や綿)を用いることが本当に安全性の保守に繋がるか否かという問題はさておき、少なくとも授業でテーブルタップの構造を理解し、水の危険性などを把握した上での考案に至っている点を評価したいのです。
みなさんも日常生活の何でもないと思っているものを再定義してみてください。きっとたくさんのアイデアがでてきますよ!(knumata)
次の書籍には、同志社中学校の授業実践が紹介されています。
ものづくりの魅力 中学生が育つ技術の学び https://www.amazon.co.jp/dp/4863591330/ref=cm_sw_r_cp_tai_BQsECbW31NYME
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