アクティブスキルの獲得が学び方を変える
ものづくり授業×(ICT+ 気づきの共有)= 強力な学びのエンジン
板目の木材を使ってカッティングボード(一昔前はまな板と言われていたように思いますが、、、)を自作するという授業を行っています。カッティングボードは野菜やお肉を切る台としての板ですから、形に自由度がありますし、穴をあけたりして意匠を楽しむこともできます。
本格的に木工の手工具を使った工作実習に入る予定で、そのカッティングボードは一番目に作る題材でもあるので、「自分もやれる!」「できる」という自信や肯定感を持ってもらいたいと願っています。カッティングボードという題材は、木工具に使い慣れない人が思い通りにできなかったとしても、作品/カッティングボードとして、100%使えます。失敗感はない題材なのです。形など意匠にこだわったり、磨きを極めたり、アイデアは足し算で加え放題の楽しい題材なのです。
もう一つ目標があります。のこぎりという道具の使い方を覚えることです。一般的な学校では仕組みと使い方を一方的に暗記させ、きちんと切れないと完成しない作品を作らせることで、のこぎり作業の集中度を高めさることが多いです。教え方として否定するつもりはありませんが、そのやり方で教えると全ての道具や製作手順について教師が生徒に教え込むことが必要になります。それよりは、「のこぎり」という一つを通して、「道具の歴史」といっしょに「使い方の覚え方」を知る授業ができるとしたら、そっちの方が生徒も得することが多いに決まっています。
前回の授業で、丸太を割る授業をしました。生徒たちは「いかに丸太から板材を作ることが難しいか」ということを身をもって体験しました。板材を作ることは大きな「困ったこと」であり、それに向けた解決策「いかに楽に板材を作れるようになるか」を考えていたに違いありません。その結果として、人類は次の世代にのこぎりという画期的な道具を生みだしました。のこぎりとは先人達の苦労の末にでてきた道具だったのです。そんな道具の歴史をも味わいながら、使い方と仕組みを学んでいくことができたら素晴らしいと思いませんか?
この日の授業はのこぎりの使い方と安全面を教えてもらったあとは、3人組で協力して大きな板目の板をのこぎりで3分割するという授業内容でした。今後はみなさんがそれぞれカッティングボードへと仕上げていく予定です。
外村先生は、説明事項を最低限におさえながら生徒自身が気づいてくれるのを待っています。ロイロノートで気づきを共有しながら、新しいことを学んでいく体験を提供しようとしています。道具には先人たちの知恵とアイデアが詰まっていて、ある条件のもとで最短で目的に到達できます。そういった先人たちの知恵に気づくということを教え込むのではないやり方、換言すれば、先生に教え込まれるんじゃなくて、自分たち自身で気づきを共有しながらわかっていく。そしてアドバイスしながら上手になっていくという授業なのです。のこぎりで学んだ学び方をほかの場面でも応用してもらいたいという願いが込められています。
別の学校では、一つ一つの道具の使い方を教条的に教授していると思います。それも一つの教育方法だと思いますし、専門教授としての技能教育を標榜している表れだと思います。しかしながら、今回のような学び方を体験的に学ぶやり方は、普通教育(General Education)としてモノづくり教育、またはリベラルアーツとしての技術教育と言っても良いくらいに際立っていると思いました。
自分ひとりの気づきをiPadでロイロノートにアップすることで、みんなの気づきと合体しアイデアや気づきを共有することができます。それは非常に強力な学びになるのです。のこぎりの使い方を身に着けるためのもう一つの積極的な学び、それはアクティブスキルの獲得といっても良いくらいに価値あるものだと思います。(knumata)