「この世に住む一員として、考えていきたい」
思考コードが創造性と問いの深さを磨く
「いつも解いているような単に記号で選ぶという問題とは本質的に違うと思い、もし自分がその立場に立ったらということを考えると、単に知識だけではこの世の中は、生きていけないと実感しました。自分でどうするかということを、この世に住む一員として、考えていきたいと思います。」(1年Nさん)
これは、入学したての中学一年生が篠原先生の社会科の授業を終えて、残してくれた感想です。正直びっくりしました。私たちは今、既存の枠組み(知識や考え方)では到底解決できない地球的規模の問題に直面していて、当事者意識をもってかかわっていくことが求められています。「恥ずかしいことは知らないことではありません。間違えることではありません。問題があるとわかっていながらその問題にコミットしようとしないことこそが恥ずべき行為なのです」と昔良く言われたことを思い出します。この一年生の言葉に出会った時、またお叱りをうけたような、背筋を伸ばして頑張らなくてはという気持ちになりました。
この感想に至る前にどのような授業があったのでしょうか?
それは社会科の一回目の授業でした。「思考コード」と言われる知識と考えが一体化したような思考の種類を体系化したようなものです。その授業で、担当の篠原先生は歴史のクイズを作らせることをとおして、歴史とは何かの本質にアプローチされました。
ザビエルを例を挙げながら説明すると、一番安い問題として挙げられるのが「(ザビエルの写真をみて)この人物の名前を答えなさい」というもので「A軸」にあたります。B軸の問題には、「キリスト教を容認した大名を一人あげ、この大名が行ったこと、その目的を100次以内で説明しなさい」です。せいぜいこのB軸の問題が応用として扱われることが多いです。ではC軸の問題はどのようなものでしょうか?「もしあなたが、ザビエルのように知らない土地に行って、その土地の人々に何かを広めようとする場合、どのようなことをしますか?600字以内で答えなさい」という問題です。このような試験問題があるとしたら、一番準備に時間がかかり、根気強く考える必要があるのはC軸の問題であることは間違いありません。
今回一年生の生徒は、篠原先生のアプローチの意図をすぐに理解し、自作の問題を作ってきました。
「もしあなたが、全く知らない土地に幕府を開き、人の信用を得ようとしたら、どのようにして信頼を得ようとしますか」
この問いを考えた生徒が、最初に紹介した感想を残し、「この世に住む一員として、考えていきたい」と書いてくれました。
「社会科は暗記科目と思われている節があり、それがとても残念でその固定観念をなんとか変えてやりたい」と常ひごろから話している篠原先生は回収した生徒のレポートの束を大事そうに抱えながら、「一年生の生徒がここまで考えてくれるとは思っていなくてとても嬉しいです。自分もこれにこたえなくては!」(篠原先生)と嬉しそうに語ってくださいました。
ぜひこの社会科の授業に参加してください。そして楽しみにしていてください。(沼田)
[参考]
https://www.syutoken-mosi.co.jp/column/entry/entry000668.php