鳴き砂研究season4
第28回京都サイエンスコンテスト地学賞受賞
塩尻さんは、鳴き砂の研究に取り組んでおられます。特に、小学校時代の研究でつくった鳴き砂の音が不安定であった点の改善を今回のテーマとして、さまざまな砂の音色や波形をオシロスコープで分析し、その指標に基づいて自作の砂を評価されました。塩尻さんの研究は、科学的な探求における実験と分析の重要性を示し、特に若い研究者が直面する挑戦とそれを乗り越えるための粘り強さを見事に表しています。
京都市青少年科学センター 第28回京都サイエンスコンテスト(https://www.edu.city.kyoto.jp/science/recruit/ksc.html)において、地学賞を受賞されました。(技術科 沼田和也)
鳴き砂をつくろうPart2〜鳴き砂研究season4 〜
同志社中学校 1年 塩尻 萌
皆さんは「鳴き砂」を知っていますか。鳴き砂とは、力を加えると丸みを帯びた石英の粒同士が擦り合わされ、キュッキュッ、クックッ、と鳴る現象のことです。条件が揃った砂でないと鳴きません。私は4年間、鳴き砂の研究をしています。昨年は、それまでの研究を基に、人工の鳴き砂をつくることに挑戦しました。しかし、音は安定性がなく、まだまだ鳴き砂とは言えませんでした。そこで今年は、より本物に近い鳴き砂をつくろうと思い、このテーマを選びました。
この研究では、京都府京丹後市の琴引浜の鳴き砂をモデルにしました。琴引浜の鳴き砂は、石英の割合が70%以上あり、必ず「ラ」の音程で鳴きます。そんな鳴き砂をつくるために、昨年はチューナーで音程を調べましたが、今年は音をより詳しく調べるため、オシロスコープを使って音を波形で表し、音の大きさや音色などの視点からも音を調べてみることにしました。
昨年つくった鳴き砂は、石英の割合が98%のオーストラリアの海岸の砂と、琴引浜周辺の砂浜の中で、最も石英の割合が低い小天橋の砂を、7:3の割合で混ぜてつくりました。その砂の音をオシロスコープで調べてみると、音が小さく、波形が一定の形ではありませんでした。琴引浜の砂は波形が一定で、波の中に小さなギザギザが見られます。このことから、昨年つくった鳴き砂は、鳴き砂とは言えませんでした。
次に、それ以外の琴引浜周辺の砂をオーストラリアの砂と混ぜて鳴き砂をつくりました。つくった鳴き砂は3種類で、箱石浜、小浜、葛野浜の砂を使いました。
昨年のように7:3の割合ではなく、3つの砂の石英の割合によって、オーストラリアの砂を混ぜる量を変えました。箱石浜は3割、小浜と葛野浜は5割のオーストラリアの砂を混ぜました。その結果、箱石浜の砂を使った鳴き砂は鳴きましたが、小浜と葛野浜の砂を使った鳴き砂は鳴きませんでした。
この結果には、粒度が関係していると考えました。オーストラリアの砂は、琴引浜やその周辺の砂浜の砂と比べて粒がとても細かいです。そのため、細かい砂粒のオーストラリアの砂が、半分を占めていた小浜と葛野浜を使った砂は鳴きませんでした。これは、オーストラリアの砂を多く混ぜることによって、全体の粒度が小さくなったためと考えられます。このことから鳴き砂づくりでは、粒度も重要だとわかりました。
鳴き砂は近年、減少してきています。鳴き砂はとても繊細で、タバコや油などで汚染されると鳴かなくなってしまいます。砂浜を見てみると、様々なゴミが落ちています。ゴミは鳴き砂だけでなく、海や、そこに住む生き物にも害を及ぼします。鳴き砂を人がつくることはとても難しいです。自然にしか創り出せないからこそ、価値のあるものです。そんな鳴き砂を守るためには、一人一人がゴミを出さないように注意を払い、美しい砂浜を守っていく必要があると思います。