より深い設計プロセスの学びがアイデアの源泉になる
〜道具との出会いを通して学ぶテーブルタップ実習〜
教材用テーブルタップキットは実に様々な事柄を楽しく学べる。基本的な電気回路の仕組み、ネジによるケーブルの締結方法、回路計による電気抵抗値の測定方法
を学び、その実習場面で使用する工具(ワイヤーストリッパー、圧着工具、ドライバー、ニッパーなど)の意味などを、組立作業を通じて実感的に学んでくのだ。実際に使い物になる本物をつくりあげる醍醐味もある。実際に持ち帰り、実際に使うため、教材用テーブルタップの使用上の注意点や限界点など学びを通して、現実に出回っている商品の値打ちを判断できるようになる。電テーブルタップの製作を通して、消費電力や送電線、より生活に密着した電気の学習、さらに発電のシステムなど発展させることができる優れた題材なのだ。しかしながらその組立作業の一つひとつの意味を十分に理解しないで組み立ててしまうと、安全な作品とはならないし、その題材が持っている面白さに中学生たちは出会うことなく終わってしまう。
道具に秘められた人々の知恵や、それを発明するまでの名もない人々の苦労を想像し、自分で一つ一つの作業を様々な道具をつかって実際に体験することは、道具を介して先人たちと繋がり、発想や設計の過程を追体験できる。先人たちがどのように課題を設定し、それに対して解決策をどのように講じてきたかを想像できる組立実習でもある。さらには製品の生産場面だけでなく、その工程の前後に関わっている設計や販売の場面で働く人たちのことを思うことができる。
テーブルタップの組み立ての中で、もう一つ大切な作業がある。それは、ビニールを剥ぎ取った芯線(電線ケーブル)とネジ止めするための金具(圧着端子)をしっかりと繋ぐ(圧縮接合)するための工具だ。しっかりと繋ぐ作業が、テーブルタップの安全性を担保することを意味しますが、その一定の締め付け具合、JIS規格に準拠した正しい「締め付け具合」を誰がやっても同じように実現する工夫がなされている。芯線に圧着端子を差し込み、その工具で締め付けようとします。このとき、不十分な締め具合であった場合、その工具は金具に「噛み付いた」まま離れない。「圧着ペンチは完全に圧着するまでレバー部分が開かないので、自分でどれくらいの力をいれたらいいかとか考えなくていいし、教えてもらわなくも、品質のより安全な接合ができる」と生徒も述べてくれる。電気関係の分野では、要となる作業に対し実に豊かなアイデアでシステマチックに作業が行えるようになっていることが多く、その場面で登場する道具には安全性に対して、惜しみない先人たちの工夫や努力が詰まっている宝庫なのだ。道具のより深く学びに注目してみみれば、ただ「ネジを絞める」という行為の中に、とんでもない工夫や安全性がものづくりのシステムの中に設計されていることに気づくのだ。(沼田)