「自分が動けば世界が変わる」
「モノコト」での中学三年生の気づき
2018年、モノコトイノベーション(Mono Coto Innovation)に参加した大津さんに、モノコトを振り返ってのインタビューをしました。たくさんの感動的な言葉があふれでてくるので本当にびっくりしていました。それほど素晴らしい体験だったんだなと思いました。
↓プロモーションムービー(大津さんのカットかなりつかわれています)
<<鍵はフラットな関係>>
カシオなど一流企業の社員の方々、モノコトの主催者のメンバー、全国から集まった主に高校生などと討議しアイデアを出していく中で、様々な方々との出会いが自分を変えたと大津さんは振り返っています。とくにカシオの社員の方々が印象に残ったといいます。
「私大人だ~っ、みたいな感じで上からくるんじゃなくて、いっしょにならんで対等に考えてくれるんですけど、困ったときとかは、それた道を元に戻してくれたり、自分たちが求めているものは何かっていうのを再定義するのを手伝ってくれたりしてすごく頼れる方々でした」
1 これは教員にとっては結構耳の痛い話でもあります。まさに”上からものをいう”特性をもった人間がまだまだ多いのが学校という場所かもしれないので、文科省が求める‘求められる教員像‘ を待たずして、大津さんたちが述べている大人像こそが教員のあるべき姿だということを教えていただきました。教員は生徒の皆さんに対してついつい謙虚さを忘れ、上から目線になりがちだと思います。反省しなくてはなりません。
2 他の高校生や参加した企業の方々もよく似たことを言っておられます。
「(企業さんと)最後には対等な立場なんじゃないかっていうくらい打ち解けて、すごくよかったです」(参加した高校生)
「学生と社会人でもフラットな関係で本音で本気で語り合えるところがとてもいいな」(カシオ)
新しいことへ挑戦したり、イノベーティブな活動にかかわればかかわるほどそのようなフラットな関係が一つ大切な要素であると言えましょう。これからの学校がよりイノベーティブで新しい学びへ挑戦するのであれば、教員自身もより深く学ぼうと努力し、学びに対する謙虚さと、生徒の皆さんに対しても尊敬の気持ちを持ちながらフラットな関係をベースに共に探求していく質の高いマインドが教員の必須条件となることを意味するのだと思います。
4 ホンダ、カシオ 「大人の上から目線は間違いだった」ホンダやカシオ…
ビジネスの視点からも同じようなことが言われています。「大人だけが正解を知る時代は終わった」という発言は、学校に置き換えてみれば、「教師だけが正答を持つ時代は終わった」ということになりましょう。予定調和的な探求ごっこから、考え方をシフトさせることを突き付けられているのだと思います。
<<「自分が動けば世界が変わる」>>
大津さんはさらに言います。
「欲しいものが今この世にないなら自分で作ったらいいし、今存在しているもので足りないものがあれば自分で足せばいいし、自分が欲しいって思ったものは自分にしか作れないから、自分から動くことで世界が変わることも絶対にあると思います。」
どこからこんな自信がでてくるのでしょうか?とても中学生とは思えません。このイベントを通してデザイン思考を学ぶだけでなく、もっと大事なものを学ばれたのだと思います。同世代との本気の共同作業、フラットな関係の中で企業の方々と新しいものを生み出したという体験が大津さんに大きな影響を与えたことはいうまでもないでしょう。
そのイベントの中でも次の高校生の発言も興味深いものでした。
「中高生がガチでプロトタイピング、企業と一緒にモノを作ったり、考えたりデザインすることって、コトづくりってのはいっぱいあるんですけど、その中でモノを作るっていうのはそうそうないと思うんですよ。」(参加した高校生)
高校生が参加できるビジネスコンテストはたくさんあるけれども、その多くはコトづくりがメイン。モノづくりにとことんこだわって、企業がモノづくりの手伝いをしてくれる経験はなかなかないということ。そしてその内容を自信満々に語っているのも印象的です。
この発言を聞いた時、私はサンフランシスコで突然訪問したGever氏のお話を思い出します。彼の教室では、小さい小学生くらいの子どもにも大人の付き添いのもとで、機械を使わせながら(大人が手をとって)モノづくりをさせているということでした。どうしてそこまでやらせるのですか?と質問しましたら、「自分への信頼を持つことができる子どもになるから」と言われました。彼の教室でいろいろな機械や道具の使用を通して、モノづくりをしていくと、「あそこにいる小さい子どもが、僕に対して対等な関係で話しかけてくるようになるんだ」とおっしゃっていました。Gever氏はTED talkでも話されています。ぜひご視聴ください。
<<「(自分の)価値を見つけてくれる場所でした」>>
この言葉も大津さんの言葉ですが、大津さんにとってはまさにそう感じておられた正直な感想だろうと思いました。大津さんのあのすがすがしい自信、しずかにゆっくりと話をするキャラクターでありつつ強い芯みたいなものがはいっている感じは、その発言に説得力を持たせてくれます。参加してよかったことを一つしか言えないとしたら何といいますか?という質問に対し、「4か月間の中で自分の意識が格段にかわったことです」とおっしゃっています。
このようなすばらしい体験を提供してくれるモノコトイノベーション。東京に行く機会があるのならぜひエントリーしていただければと思います。(knumata)