すぐき栽培開始!探究学習、ソーシャル・イノベーション

「はじめて土さわった!」
「はじめて土さわった!」
これは、すぐきの種まきをした後、ある生徒がつぶやいた言葉です。私はこの何でもないようなこのつぶやきの中に、価値ある何かを感じました。それは、今まで生活の中でつかんできた経験や知識の断片がつなぎ合わさった瞬間といえるのでは?と思いました。おそらくその生徒は本当に「土をさわった」ことなかったわけではなく、今回が「はじめてさわった」のでは、なかったはずです。しかし、「はじめて土さわった!」と感じた背景には、種まき実習の前に学んだ「すぐき」の生育過程(ビデオや資料で確認)、腐葉土の意味を知識として習い、そのうえで実際に体験する種まきの「実習」を通して、はじめて何かがつながったのではないか、その瞬間にでてきたつぶやきではないかと感じたからです。まさに断片的な知識や経験が、生きた五感を通して体でつかんだものへと質が変わったのだと思います。
探究として成果の一つとなる論文やビジネスコンテストでは、アイデアの独創性や実現可能性、社会へのインパクトなどが評価の対象となりますが、その背景に流れている本物の経験やその経験と知識がつながった感性的な深さこそが大事になるはずです。それが、その生徒のものを唯一無二のものに変えると思うのです。だからこそ、まずは自分で直接はたらきかけ、土の匂いや質感を自身の五感で感じてほしいのです。そういった体験をこそ大切にしてほしいと願っています。だからこそ、すべての生徒に頭と身体をつなげられるような実習を用意してあげたいと考えます。実習とは、学びを確かめるだけのものにおわるのではなく、自ら問いを立て、答えを模索する場であり、自身のゴールや未来へとつながる思考の出発点であってほしいと思います。探究の授業として、論文執筆の作法だけでなく、授業でしか体験できない厳選された教育コンテンツ、より本物に近い体験を提供したいと思っています。
すぐき漬けプロジェクトは、兼業農家の森田さんより相談を受けて、学校でも取り組んでいこうと考えました。京都の三大漬物とされているすぐき漬けをV字回復をめざして授業やロジェクトで取り組んで5年になります。地域の歴史と未来を自分事として、地に足がついた学びをしていきたいと思っています。(教頭 沼田 和也)
参考記事
「すぐき漬け」絶やさない 京都の中学生が栽培、レシピやキャラ考案


