自由研究(探究)で海外とつながる
Global Link Singapore 2024にて佐伯さん発表
Global Link 2024 (課題研究・探究の世界大会) をご存じでしょうか?
同志社中学校では生徒たちの探究活動、正確にはひとりひとりのテーマを究める自由研究を力強く応援しています。その自由研究は、3年生になれば、ゼミ発表を行ったり論文集を発行します。また自由研究の冊子『きささげ』やデザイナーと共同してつくる『KAPONO』もあります。
今回紹介したいのは、自由研究の取り組みを海外での発表につなげていった佐伯さんの取り組みです。24年夏、シンガポールで開催された国際課題研究大会「Global Link Singapore 2024」に参加し、自身の研究を英語で発表しました。この大会は、アジア各国の中高生が集まり、基礎科学、応用科学、社会科学の3分野で研究成果を共有し、議論を深める場です。(シンガポール、ベトナム、インドネシア、台湾など、様々な国の中高生が集まりました)
佐伯さんは、中学1年生のときにコロナで”ステイホーム”を体験することになります。「こんなに家で過ごす時間が多い」ことに不満をもっていた佐伯さんでしたが、それは次第に居住空間における人々の幸せについて考えるようになります。そして一つのアウトプットとしてだしてこられたのが、「理想の家」の建築模型でした。
中学2年生のときには、学びプロジェクトの企画であった建築プロジェクトに参加し、最前線で活躍されている建築家の方々10名以上の方々からお話を聞いたり、討論することができ、感銘をうけたといいます。そして夏に世界文化遺産である白川郷を訪ね、現地の方々にインタビューをしていきます。文化・歴史だけでなく白川郷の建築構造や工法を誇らしげに説明してくださったことがとても印象に残ったといいます。建築模型の製作を目標にしていた佐伯さんは、地元の方々が誇らしげに話しておられた建築構造がよくわかる模型にしなくてはいけないと考え、カットモデルの模型をつくられました。地域で暮らすひとびとの思い、建築物への誇りと佐伯さんの模型をつなげたものでした。
中学3年生のときには、オーストラリアの田舎町バララットを訪れ、立ち寄ったレストラン「The Goods Shed Ballarat」の建築物に心が動かされます。「何かが違う」と感じたようです。地元の方々にインタビューするうちに、そのレストランの建物は駅舎をリノベーションされたことがわかりました。当時ゴールドラッシュにともない繁栄した町でありその拠点となった駅舎がリノベーションされたのでした。佐伯さんは、当時の図面から、駅舎を再現した建築模型をつくりました。
その2か月後に語学留学した先がたまたまバララットの近くだったこともあり、レストランを再度訪問しレストランのオーナーに、自由研究の内容(建築模型)の話を聞いてもらい、新聞社を紹介してもらったようです。「このGoodShedが、ゴールドラッシュのときの駅舎で当時の人々のエネルギーがつまっている建物を、白川郷のように地元の方々の誇りのように感じてもらえれば」という思いで新聞社の方とお話をして、地元新聞(Ballarat Times)にも掲載していただきました。
佐伯さんは「学びプロジェクト」を通じて建築に関心を深め、3年間にわたり建築に関するテーマに取り組み、人が生きることと建築とのつながりを追求してこられました。単なる学問的調査としての探究ではなく、人々が地域に建築とともに生きるという大きなテーマに向かって取り組んだ運動ともいえるものでした。今後も「建築」をテーマに、多くの人とつながり、活動を続けていきたいと語っています。
その探究の足跡をまとめた研究として、シンガポールの南洋理工大学で発表し、アジアの中高生と議論されました。「学びプロジェクト」を通じて培った探究心と行動力、自由研究をきっかけに国境を越えて自身のアイデアを豊かにふくらまし、地元の人々に誇りを持ってもらうムーブメントを起こすまでに至る経験は、私たちの自由研究の取り組みとして特筆できることであり、自分事として主体的に学び、社会にコミットしていくことの重要性を教えてくれます。(技術科 沼田 和也)
参考)
佐伯さんの建築プロジェクトに関する詳細は、次の動画でご覧いただけます。https://youtu.be/1hKmPBYFKv0