3月14日、「円周率の日」です。ご推察のように、円周率3.14にちなんでいます。英語では「Pi Day」(πはPiとも書きます)となり、食べ物のパイ(Pie)と発音が同じなので、この日にパイを食べてお祝いする習慣もあるようです。
毎年、3年生数学の授業で実施している算額づくりの取り組みが今年もありました。(本校の授業で使う算額は、親しみやすい絵馬の形にしています。)個人またはグループで、中学数学を使って作った問題を算額の表面に、その解答・解説を裏面に書くというものです。各クラス1組、計8組の優秀作品が選ばれ、滋賀県大津市にある三井寺観音堂(みいでら)に永久展示されます。その中の作品の問題図が、アルキメデスが円周率を求めた方法を思い出させるものでした。円周率の日にちなんでご紹介したいと思います。
円周率は、円周と直径の比(円周÷直径)の値です。アルキメデスは、円周は円に内接する正多角形と外接する正多角形の周の長さの間にあるから、正多角形をどんどん細かくすることで正確な円周率を求めることができると考えました。彼は、正96角形まで計算して、「円周率は3と71分の10より大きく、3と7分の1より小さい」ことを発見しました。この計算は円周率が小数第2位3.14まで正しく求められたことを示しています。
- 円に内接・外接する正6角形で円周率を考える
この1題は、算額に印刷されている本校の校章を正6角形に見立て、正6角形に外接する半径6cmの円が問題図となっています。まず、円に内接・外接する正6角形で円周率を考えてみましょう。問題図の円に「内接する」正6角形の1辺は6cm、周の長さ36cmですが、この円に「外接する」正6角形を書いたとすると、その1辺は4√3cmとなるので、正6角形の周は24√3cm、√3=1.732とすると41.568cmとなります。この円の直径は12cmで、円周は内接する正6角形と外接する正6角形の周の間の長さです。したがって、円周率はそれぞれの正6角形の周の長さを12で割って求めることができます。36cm<直径6cmの円周<41.568cmそれぞれを12で割って、
3<円周率π<3.464
正6角形を使って円周率を考えると、3より少し大きい値というところまでわかります。
- 円に内接・外接する正12角形で円周率を考える
問2は正12角形の面積を考える問題でした。次に円に内接・外接する正12角形を使って円周率を考えてみましょう。円に内接する12角形の周の1辺の長さは算額の解答図(写真)のように、正6角形に重ねて正12角形を書くと、ピタゴラスの定理で考えることができます。正12角形を12分割した三角形は2辺が6cmである二等辺三角形になり、等辺を底辺とした時の高さが3cmになります。問2はこれらの情報を使って、半径6cmの円に内接する正12角形の面積108cm2を算出されています。円に内接・外接する正12角形の周の長さは、三角比を使うと簡単に求められます。が、中学数学では、相似な三角形、ピタゴラスの定理で解くことになり、少し面倒な計算が必要です。円に内接する正12角形の1辺は、二重根号(高校範囲)が出てきて、整理する(二重根号を外す)とかっこ内の表記になります。これを12倍して、周の長さを求めることができます。
√3=1.732とすると、円に内接する正12角形の周は、37.270cm(小数第4位四捨五入)です。一方、円に外接する正12角形の1辺は、6(4-2√3)となり、同様に、√3=1.732として計算すると、円に外接する正12角形の周は、38.585cm(小数第4位四捨五入)です。
37.270cm<直径12cmの円周<38.585cm
それぞれを12で割って、
3.106<円周率π<3.215
正12角形を使って円周率を考えると、上の2数の間にあるということがわかります。これをアルキメデスは正6角形から辺の数を2倍にして(辺の長さを求める法則)、正96角形までひたすら計算したのです。すごいことですね。
ちなみに、円に内接する正12角形の周の長さを求めることは、2003年、東京大学の有名な入試問題「円周率が3.05より大きいことを証明せよ。」の解答例にもなっています。
(数学科 園田毅)