Newton2021年12月号は「円周率π」を特集しています。
円周率πは、言うまでもなく世界中の多くの皆さんご存知の、円周は直径の何倍かを表していて、3.14から始まり無限に続く「無理数」という種類の数です。ニュートンの表紙には「3.141592・・・・・・。『最後の数字は絶対にわからない」とキャッチコピーが入っていました。
人類は紀元前5000年ごろから円周率の存在(円周と直径の比は決まっている)に気づいていて、古代エジプト、古代バビロニアの時代から、車輪のような運搬ツールを作成するために、3.125や3.16などの値が使われていたそうです。もちろん、自分で円を書いたり、コインなど円形の何かの円周を測ることで、πはだいたい「3とちょっと」ということがわかります。が、人類はそれで満足せず、より正確なπの値を知るための工夫と努力が続けられていきました。
この紹介文では、円周率の求め方をいくつかご紹介します。
(1)最も有名なのは、古代ギリシャの科学者アルキメデスが「正多角形」を用いてπの値を求めた方法です。例えば、正6角形が半径1の円に内接する場合と外接する場合の周の長さを考えます。内接する正6角形の周はちょうど6ですから、まずは、円周率は3より大きいことがわかります。アルキメデスはこの方法で正96角形を使って、πの値を「3.14」まで決定しました。
(2)「モンテカルロ法」、「ビュフォンの針」
例えば、1辺10cm(普通の折り紙は1辺15cm)の正方形を書き、その内側に半径5cmの円を正方形に内接するように書きます。そこに、真上からお米を落とすと、正方形の中に落ちる米粒と円の内側に落ちる米粒の数の比は、それぞれの面積比に近い数値になりますね。正方形の面積は、100cm2、円の面積は25πcm2になるので、面積比は、4:πになります。実験でこの比からπに近い値(近似値)を計算できます。落とす米粒の数を増やせば、より3.1415・・・に近い値になっていくと予想されます。
この実験をコンピュータで行うのが「モンテカルロ法」と呼ばれるπの計算法です。
(実験でπを求める方法として「ビュフォンの針」という有名な実験もありますが、この記事では省略します。)
(3)「無限の足し算(引き算)」でπを求める
中高(教科書)で直接学習することはありませんが、14ー17世紀にかけて、インドやヨーロッパの数学者が以下のような無限の足し算(引き算)を無限に計算していくと、πを含む値に限りなく近づく(「収束する」と言います)ことを発見しました。
18世紀以降、「無限級数」と呼ばれるこれらの式の計算を行うようになり、πの近似値のケタ数は数百ケタまで求められるようになってきました。第二次世界大戦後、1949年以降はコンピュータによる計算が行われるようになり、東京大学金田康正教授のグループが世界一を次々に記録更新していた時期もあります。
中学生の皆さんには、(3)に紹介した数式の掲載ページ(p75、p82)を、詳細はわからなくてもいいので、眺めてほしいと思っています。1つの規則にしたがって並べた分数の合計に円周率πが出てくる不思議さを感じてもらえるとうれしいです。
(数学科 園田毅)