私たちの住む地球には、たったひとつの「月」という衛星があります。火星の衛星は2個、木星、土星に至っては60個はあります。地球にとって唯一の月だからこそ、古人よりさまざまな呼び名で親しまれてきました。人工的な光がない時代、夜を見上げた先にはさまざまな形状の月が圧倒的な光度で輝いていたことでしょう。
満ち欠けによる呼び名では、新月・朔→三日月→上弦の月→九日月→十三の月→小望月→望月・満月・望→十六夜の月→立待月→居待月→寝待月→下弦の月→二六夜の月と続き、新月に戻ります。興味深いのは「立待月」からの人の姿勢の変化です。満月の翌々日は、そろそろ月が出るかと外に出て立って待っていたので「立待月」、さらに十八日の月は月の出が遅くなり、家の中に居て待っていたので「居待月」、そして十九日はさらに月の出が遅れて、寝て待っていたので「寝待月」と人を待つ”待ち人”の姿は床(就寝)に向かいます。
立志館2階の「国語MS」では、この月の変化の様子がとてもわかりやすく表現されています。是非この展示の前で、平安時代の都人の独特の感性に共感してみてください。
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【展示作品への想い】
夜の明かりがほとんどない時代、人々は夜空の世界にさまざまな想像力をかきたてられました。
日本の古典作品を見ていくと夜空、特に月への思いを読み取ることができます。例えば、昔話の「かぐや姫」が描かれた作品として有名な『竹取物語』では、かぐや姫はある罪を犯して月の世界から地上へと堕とされ、最後には月からの使者に連れられて月へと帰って行きます。かぐや姫が月に帰った八月十五日の月は「中秋の名月」と呼ばれる満月で月が最も美しく見える日です。また、『竹取物語』が成立した時代、月を直接見ることは不吉なこととされていて、池の水面や杯に映して美しい月を鑑賞し歌などに残していました。
月には昔の人のロマンがたくさんつまっています。だからこそ、月をさまざまな名前で呼んでいたのです。そのような感性を少しでも感じてほしい、そして少し立ち止まって「今日の月は何の月かな?」と夜空を眺めてほしい、そんな気持ちでこの展示を作成しました。(国語科 植田彩郁)
The Earth that we live on has only one moon, while other planets have many moons. In the past, before manmade lights, the moon was used as a way of lighting at night. Each phase of the moon was given a name according to its shape and number of days past or before a “New Moon”. These names often came from the amount of light that was reflecting off the Moon or the time at night that it appeared.
In the Japanese Department’s Media Space we can find a display that explains these names. Ms. Ueda from the Japanese Department helped to make this display. She explains that these names for the different phases of the moon can often be found in old Japanese literature and poetry.
The Moon was seen as “romantic symbol” as well as a way of expressing the passing of time in a story. Please take a look at this display and learn about literature in the Heian Period.