2013年夏、1994年度本校卒業生の藤野可織さんが第149回芥川賞を受賞されました。受賞作品は「爪と目」でしたが、受賞後の第一作が「おはなしして子ちゃん」という作品です。帯に「恐るべき才能が炸裂する10篇のおはなし」と記されたこの本の表題作は、その舞台が中学生時に過ごした今出川の理科室のようです。そして藤野さんは当時展示してあった数多くの標本の中でも「サル」から受けたインパクトが強烈だったのか、作品中に次のような描写があります。
「もっとも印象深かったのは猿です。猿は、私が確認できたかぎりではその棚で唯一の哺乳類であり、瓶は抜きんでて大きく、漬けられている当の猿にとっても少々大きすぎるほどでした。猿は膝をゆるく曲げ、背を瓶の側面につけ、中腰のような、空気椅子に座っているような恰好でじっとしていました。…猿の表情はやすらかでしたが、見ようによっては不安げでもあり、なにかをためらっているようでもありました。」
この標本が想遠館の理科MSに現在展示中のサルです(写真)。また、文中には標本棚の印象として、「標本は、長いこと手入れをされていないようすでした。」「ラベルに記された文字はおおかた消え去り…」、あげくに「展示する意図の一切感じ取れない棚でした」とも。教員のひとりとしてこの言葉を励みにしながら、貴重な標本の整理にむけて努力したいと思っています。
In 2013, Kaori Fujino, a graduate of Doshisha JHS, won the Akutagawa Prize for Literature with a book titled “Tsume to Me”. In her next work, she wrote a story based on her school life at Doshisha JHS, titled “Ohanashishite Ko-chan”. In this story she talks of the impact that a monkey that was on display in the Science Department in the school at the time, had on her.
This monkey can now be found displayed with the book in the Science Media Space.