3Dプリンターから調理実習、そして沖縄研修旅行へ

手の中に宿る生活と学びの探究心
この冬に沖縄研修旅行(多くの公立の学校では修学旅行と言っているが)を控えている3年生は、沖縄をテーマにした学習活動に取り組んでいます。教科の学びが研修旅行へ結び付き、より生きたものになるよう工夫をこらして授業内容を再構成しています。技術家庭科、社会科という教科のつながり、またその教科と教科外活動としての研修旅行が有機的につながって、探究的なまなびの手ほどきを獲得できるチャンスにできないかと考えいます。
技術科の授業では3Dプリンターを使ってものづくりを行っていますが、その授業で獲得した技術を使って、オリジナルのクッキーカッターを設計・制作してくれた生徒がいました。どんな形にすれば生地をきれいに抜けるのか、強度は足りるのか。試行錯誤の中で、使い手の立場にたって考えたと聞きます。実物の試作と、改良の思考を繰り返して、目の前にプリントアウトしたそのクッキーカッターは、買った商品とはわけが違います。そのクッキーカッターを家庭科で活用し、全学年の生徒がそのカッターを使用するのです。設計者の共感力とアイデアが本当に試されるのです。
家庭科の調理実習では、沖縄の伝統菓子「ちんすこう」を調理実習しました。生徒自身の設計による道具(クッキーカッター)を実際に使うことは、机上の知識・技能を自分事化できる最高の場面です。
「○○さんが設計したカッターやで!どう?」という問いかけに生徒は、
「そうなん!すごいやん!普通に使いやすい!」と即答してくれる場面もありました。技術科で学んだことを家庭科の場面での新しい学びに活かしていく瞬間です。
今後、社会科では沖縄の歴史や文化の学びを深めていきます。琉球王国の時代から今の沖縄に至るまでの歩みを知るときに、実際にちんすこうを作って味わったことがあるという原体験は、学ぶ知識が地に足についたものになることは想像に難くありません。
そして三学期には、いよいよ沖縄研修旅行が控えています。教室で学んだことを現地で確かめ、人々と出会い、文化や自然に触れる。生徒たちにとって、それは学んできたことを自分の目で見直し、身体で感じる体験になります。教科書のテキストや頭の中で想像しながら話し合ってきたことが、現地の空気や匂いを伴って立体的に迫ってくるとき、自分自身の身体に宿る「知」となって身体化されます。 ものづくりから生活、生活から歴史、そして歴史から現地体験へと流れるプロセスが、生徒一人ひとりの中に「学びの価値とは?」という大きなテーマをも問いかけることとなるでしょう。
大切なのは、教科書のテキストをなぞるだけではなく、自身の体験や生活と結びつけたときにはじめて身体の深い部分に刻み込まれます。 今回の沖縄をテーマにした探究は、換言すれば、それは生徒たちにとっての学びの自分事化です。「沖縄」を、自分の身体にくぐらせ、感性で新たに書き換えていくこと―それこが、学びの礎となって、みなさんの人生を豊かにしていってもらえる本物の探究の旅となると信じています。(技術科 沼田 和也)



