探究心が照らし出す未来
同志社中学校3年生の自由研究発表会
中学3年生の生徒が1年間かけて取り組んできた自由研究(卒業研究)の発表会が終わった。最後の集合写真の時には、緊張がとけた安堵の表情とやりきった満足感とが入り混じった表情になっていて、充実感が込みあがってくるのを感じた。同志社中学校では1年時から各自が研究テーマを持ち、調べたり、調査に出かけたり、試作・製作をしたりそれぞれのオリジナリティあふれるアプローチで、自由研究に取り組んでいる。特に3年生の発表会は特別である。研究論文に仕上げ、発表のスライドを作成し、発表・質疑応答という本格派の探究活動の発表会だ。研究大会でよくあるポスターセッションとは一味も二味も違っている本物なのだ。生徒たちの振り返りの気づきをご覧いただきたい。
・「初めて本格的な模型制作に取り組んでみて、サイズを間違って測ってしまったり、材料が足りなくなったりもあったけど、その時に何か家にあるもので代用したりと対応能力が高まった。」
・「初めて論文を書いてとても難しかったですが、自分の意見や考察また状況を文で説明する力がついたと思います。(中略)文を書く力が伸びたと思います。」
と、「初めて」という表現を使っている背景には、自身の大きな成長によって一回りも二回りも大きくなった自分を実感してその嬉しさがあるのだろうと容易に想像できる。これからの未来の主人公となる生徒たちにとって大切な挑戦心につながると信じている。
・「過去や現在の状況から未来の街を考えて、想像力が成長したと感じました。」
・「早くクオリティに高い発表ができる。浅いところから深く掘り下げること」
・「自身の知識範囲が広がっていると思う。1〜3年の内容が統一したテーマだったので毎年毎知識を更新できていると思っている」
・「プログラムを書く力、困難を解決する力」
・「文章を考える際言葉遣いが大人になった。」
・「一つの題にたくさんの文献を使って自分の言葉でまとめるということが段々得意になっていった気がしました。また、たくさんの人の前でも落ち着いてゆっくり話すことができるようになったと思いました。」
上記の例のように生徒たちは、求められる創造的な問題解決者であったり、プロフェッショナルなコミュニケーションを行う上での大きな資産を得るような成長を実感している。生徒自身の喜びや表現することの自信につながっている。また、
・「緊張したけど、みんなの反応が良くて嬉しかったです!」
という生徒は、ポスターセッションとは違う論文発表の教室という知的負荷の高い環境の緊張の中で、参加した聴衆の生徒のみんなに励まされ、充実した時間を感じていただろう。この経験が生徒たちにとって単に学びの場を超え、コミュニティの一員としての属所感や達成感を感じる機会であったことを示しているに違いない。このような経験は、生徒たちが将来、どのような道を選んでも、困難に直面した際に持続可能な努力を続ける力を養うことに繋がると信じている。授業の1コマ以上の学び、それは知識やスキルの単調な獲得ではなく、学ぶことと今を生きることの喜び、そして自信を獲得する時間になったことは想像に難くない。
今日という日は、生徒たちにとって単なる学業の成果を披露する場に留まらず、自己成長の機会として、また将来への準備としての大きな一日だったと思う。生徒たちの未来が、今回の自由研究発表会での学びによって一層輝かしいものになることを、心から願っている。(教頭: 沼田 和也)