持続可能な学校建築とは?
足立さんが描く未来の学校
産業界だけでなく学校教育もまた転換期にあるといわれている。学校は今やさまざまな教育潮流の中にあり、新しいコンセプトやコンテンツに適合させていくことが求められているのだ。とはいえ、学校とは人が育つ場であり、歴史の流れの中で不易なものは何であるか?という問いと合わせて、少し先の未来を描いていこうとしている。そんなテーマに取り組んでくれた生徒が足立さんだ。足立さんは昨年も建築における”憩い”の空間デザインにとりくむ中で、建築物の向こう側にみえる人とのつながり、自然と人間の調和、時を越えて人々のつながりを思考されていた。今回のテーマはずばり「持続可能な学校建築とは?」だ。足立さんの問題意識を次のように射程した。
「これからの未来に必要とされる人材が変わる中で、小学校の教育方針も時代とともに移り変わっていくべきだと思った。今回の自由研究では教育のかたちが大きく変わっていく未来に必要とされる持続可能な小学校建築について考える。小学校は自分たちが一番最初に、読み書きや計算などの知識を身に付け、集団生活の中で人との付き合いや、自分とは違う考えを持つ人と触れ合うことが豊富にあり、人生の経験を積み上げていく場所である。その場所のあり方を考えることでより未来に必要とされる人材を育成することができると考えた。」(足立)
足立さんの取り組みは、「教育」と「建築」の垣根をこえた融合をねらっている。
教育学の観点から
足立さんは、将来必要とされる人材育成に必要な能力として、コミュニケーション能力、創造力、デジタルリテラシー、グローバルマインドセット、語学力、論理的思考力を挙げている。これらの能力を育成するために、選択授業、グループワーク、新しい教科の導入(ディベート、職業講和、情報)を提案している。これは、現代社会が求める多様な能力を育成するために、従来の一方的な知識伝達から生徒が主体的に学ぶ環境への転換を示唆している。教育学の観点から、足立さんの論文は、未来の教育が目指すべき方向性を具体的に示し、生徒一人ひとりの能力開発と個性を尊重する教育の重要性を説いている。
建築の観点から
建築の観点からは、エコスクールの概念を中心に、環境に配慮した持続可能な学校建築の重要性を強調している。エコスクールは、環境教育の発信拠点としての役割も果たし、地域における地球温暖化対策の推進に貢献する。また、デンマークの「The New School」の事例を引用し、持続可能な材料の使用、エネルギー消費量の削減、室内環境の改善など、持続可能性を考慮した学校建築の好事例をもとにして考察を加えている。建築の観点から見ると、足立さんの論文は、未来の学校建築が持つべき特性として、環境への配慮だけでなく、学習環境の質の向上にも寄与する設計の重要性を示していまる。
模型製作
足立さんが製作した模型は、彼女の持続可能な学校建築に対する思考の着地点である。これは未来の教育環境と建築デザインに対する新たな視点を提供し、これらの分野で将来大きな影響を与える可能性を秘めている。(技術科: 沼田和也)
足立さんの論文はこちら
https://jhs.js.doshisha.ac.jp/wp-content/uploads/2024/02/7bb77a7dcedae8b160d7ef62ccc42758.pdf