歴史の授業で思い切り自己主張するってありなんだ!
方丈記をモチーフに、鎌倉時代を”自分事化”する授業
篠原先生の授業はいつも面白い。「成績やスコアで縛らなくても、生徒たちはものすごく集中して課題に取り組んでくれます」とおっしゃる篠原先生は日頃から「生徒引きつける問い」探しに熱心だ。
今回は鎌倉時代。授業設計の中でも文化・芸術の単元は授業設計が難しい。多くの学校では、この類の単元はただただ暗記を強いるというのが普通である。多くの教員がこの単元の教材研究に困る中、篠原先生は「生徒自身が自分の頭と心で歴史の文化に接近できるように」と考えられ、篠原先生自身が講義をされたあと、生徒のアウトプットとして次のような問いを出題された。
「鴨長明は、災害などの危機的状況にさらされた鎌倉時代の人々を独自の鋭い視点で見つめ、『方丈記』を著しました。それにならって、現代の社会について、あなたなりの『なんちゃって方丈記』を書いてみてください。」
生徒の皆さんは、ロイロの画面に向かっていて、何やらすごい「集中」の時間が流れていた。
「さっきのクラスなんですけど、生徒の発想ってすごいですね。なんか未成年の主張っていうテレビ番組あるじゃないですか?なんかあの雰囲気でみんな独自の論を展開してきますからね。あれだけの短い時間でこんなにたくさんの文章を論理立てて書いてくるんですよ。すごくないですか?!」
授業が終わったあと篠原先生は、楽しそうに生徒の取組を紹介しにきてくださいます。
「鉄オタはなぜキモい扱いをされるのか。それはマスコミが一部の悪い行動をした鉄オタたちを一方的に悪者扱いをして報道し、世間に悪い印象が広まってしまったからではないか。確かに、暴言や罵声、田んぼに無断で水を張ったり、ルール違反など数多くの悪い行いをした人がいる。そのような人は僕でも同業者と呼ばない。でも、それはほんの一部の鉄オタであって、他の鉄オタは静かに楽しんでいる。ほらボクのように。みんな一人ひとりに趣味がある。アニヲタとかアイドルオタクとかいるでしょう。でもなんで鉄オタだけキモい、臭いなどといった偏見をネットで言うのか。僕は言いたい。鉄オタは変な人ばかりではない。ただのマスコミやネットニュースの情報だけで誤解しないでいただきたい。僕のように健全な人もいるのです‥」
「大人はおかしい。大人が言ってきた説教に子どもが何か言うと言い訳と言い、反抗期と言。う喋れば反抗期?言い訳?おかしい!!また、親の怒りが収まるまで一言も口を開かなければ、『何か言いなさい!』とまた怒る。喋れば怒られるし、喋らなくても怒られる。?ここまで来れば何について怒られているのかもわからなくなる。しかも毎回これの繰り返し。つまり、親子喧嘩と言うものは、自分が正しいと思っている同士の永遠の決闘であり、戦争だ」
鋭くて、ほほえましくて、ぐっと引き込まれる生徒のつぶやきだ。あの少ない時間でよくこの文章をかけるなと思う。恐るべし中学1年生である。
しかし、篠原先生の授業はこれで終わりではない。方丈記をきっかけにした自己主張の取組が、鎌倉の文化の深みにはまっていく序幕なのである。その続きはぜひ篠原先生の授業で体験してもらいたい。(沼田)