日本私学教育研究所紀要に掲載されました
「国際的なSTEM/STEAM教材の考察と実践」
私は、可能な限り紀要や書籍・雑誌に寄稿させていただこうと思っています。中高の教員であっても、大学の先生方と同様に研究テーマを持って、自己研鑽に励んだり、教員自身が探究心を持って職業生活を営むことが大切であると考えているからです。昨年度、日本私学教育研究所の委託研究員として研究させていただき、なおかつ紀要掲載のチャンスをいただくことができました。コロナの影響で、発表させていただくことはできなかったのですが、寄稿させていただいた原稿はインターネット上で公開されています。
2019(令和元)年度 委託研究員 一覧 http://www.shigaku.or.jp/study/researcher_2019_list.pdf
日本私学教育研究所 紀要第56号 http://www.shigaku.or.jp/old/kenkyu/kr02.pdf 国際的なSTEM/STEAM教材の考察と実践 p.56
昨年度は「国際的なSTEM/STEAM教材の考察と実践」という研究テーマで採用していただくことができました。
その背景について紹介させてください。
私はが6年前より取り組んできているSTEM/STEAMを真ん中に置いた国際交流の展開ですが、現在も広がりつつあります。2017年、異国の生徒が集まって国際的なチームで技術的な課題を競い合うイベントAsia STEAM Camp(以下ASC)を実施しました。韓国、台湾、香港、ベトナムの小中学生が集まり、流体力学の応用として飛行機プロジェクトやレスキューロボットコンテストを国際的なチーム編成で行うことができました。この時は、その前年度の2016年にROBO/STEAMと称して香港の小中学生と日本の小中学生がロボットコンテストで競い合いながら交流を行ったときは、ロボットコンテストが主たる内容であったイベントから、STEM/STEAMにかかわる教材を広く扱ったときでした。ロボットプログラミングだけでなく、STEM/STEAMの様々なコンテンツを用いて子どもたちに働きかけた画期的なものでありました。
2018年に第2回ASCを開催したが、いくつかの課題が見えてきた。一つ目は、STEAMの教育領域である題材の未熟さでした。二つ目は、日本の学校からの参加がなく広がりに課題を残しました。第三に、中学生を運営側のスタッフとしての参加のさせ方が弱いと感じたこともあります。。
翌年、第3回目のASCを行うことができました。香港、台湾、韓国、日本所在のカナディアンインターナショナルの子どもたち、同志社小学校の生徒を参加者としてのイベントを行いました。ASCを中心にしてよりふさわしいSTEM/STEAM教材としてメインとなるロボットコンテストの他、Bridge Contest, Building of Theme Park、Propeller Projectなどを行いました。クリエイティブな発想を表現することができつつ構造も考えなければならないものは何かという視点で行ったものでした。このほか、手作り市場と称して、参加者である方々や中高生に身近なもので科学工作のワークショップも行いました。ボランティアとして参加してくれた高校生にとっても自己肯定感をたかめる企画となったと考えています。
8月には、オーストラリアの”STEMMING”会議や中高生のSTEMワークショップに参加しながら人脈を開拓してきました。ASCの取り組みのプレゼンも行い、今後、オーストラリアの諸学校とも協力しながらPacific STEAM Campとして展開してくため、よりひろい研究が必要になると考えていたのが、その背景とないます。
年度末、世界的なCOVID19のパンデミックによって企画も研究発表もできなくなってしまいましたが、今後はますますグローバルな展開求められてきます。その動きを敏感に感じながら、教員としての日頃の仕事に打ち込んでいきたいと思っています。
最後に、小中高教員が研究員として紀要や雑誌・書籍に寄稿していくことの意味について考えます。
それは第一に自分自身が”できない自分と向き合うこと”ができることであり、謙虚になれることではないかと思います。時に教員は、横柄な態度だけでなく学問に対しても横柄な態度をとって、自分を甘やかしてしまうことがよくあります。その負の落とし穴にはまらないためのシステムをいかにして持つことができるかは大切です。少なくとも、専門の方々が目にするであろう世界に、自分の文章を見てもらうことであると考えています。
日頃から生徒に「探究」「研究発表」等を求めている以上、私自身が探究心を持って研究しなくては、と思っています。人様に報告する文章を書くたびにできない自分と向き合うことになり、それが、学問に対しても生徒に対しても謙虚になることができます。それが自分にとってもプラスになることは間違いありません。
いつも生徒に対して「探究心が大切である」とか「研究論文とは云々」と言っていながら、私自身がチャレンジしていないのは良くないと思い、チャンスがあれば寄稿をつづけています。いざそれに取り掛かろうとするとできない自分に気づき、浅はかなものしか持っていなかったことを痛く受け止めるしかありませんでした。しか
しこの体験は私に謙虚さを教えてくれます。等身大の自分を見ることができて逆にエネルギーが湧いてきました。
また、紀要をごらんいただければわかると思いますが、さまざまな中高教員が同じように努力されています。研究所の研究事業という空間は、研究を真ん中において、教職員同士がつながりあえるような、そんな素敵な場所だと思います。
私は広義の教育という営みは、国境も立場もこえるものだと思っていて、それを実践するために足で繋がりを作りながら細やかな機会をつくってきました。年度末、コロナウィルスの広がりにより、年分の計画が飛んでしまったことは残念です。コロナ後の教育の世界を、国境や立場をこえていかに創造していくかが問われると思っています。委託研究員としては終わりですが、私の目標に向かって、今年も来年も研究し、実践していくつもりでいます。
(沼田)