教材はアイデアの宝庫
定番教材「テーブルタップ」に見る二つのアイデアを紹介
ものづくりという経験をきっかけにした学習活動においては、実にたくさんの気づきがあります。そして、これは少しレクチャーや気づきのヒントがないとなかなか気づけない事を紹介します。
定番のキット教材であるテーブルタップをご覧ください。特にネジに注目してください。一つ目は、本体金具に付けられた凹み、二つ目は銀色の長いネジ(タッピングネジ)です。一つ目の金具に付けられた凹みは留め金具と本体との接点を考えられた形状ですし、二つ目のタッピングネジについては、まるで刃物のように鋭いねじ山になっていて、ボディであるプラスチックをそのねじ山で切りながら進んでいくよう設計されていて、しっかりと食い組むようになっています。この小さな形状、些細な凹みは実に深く設計(デザイン)された結果であり、先人たちの知恵と工夫、発明の足跡なのです。
このテーブルタップ(延長コードとも言われる)は、本当に実生活の中でも使える組立教材で、説明書にしたがって組み立ててしまえば、あっという間に完成します。しかしその組立プロセスの中で、道具の秘密や、細かいけれど重要な発明を学ぶことができるのです。なぜなら、道具と安全性に注目して先人たちが乗り越えてきた工夫と発明、プロの問題解決の歴史が目の前の物品として存在していて、それを注意深く見て想像する事で、先人たちが行ってきた発明や問題解決のプロセスを学習者がトレースすることができるのです。
最近多くの学校で、新しい商品を開発しようというゴールを設定する授業のプロジェクトが流行ってきていますが、その多くは最初のアイデアスケッチ、モックアップのようなものが一般的です。今回紹介させていただいたのは、現実に実用されているプロの方たちが乗り越えてきた問題解決、発明のトレースによって、効率よく発想の転換やアイデア創出のプロセスを体験できる機会となりました。
小さなことだけれどそこに詰まった大きな価値がある発明。これに気付けるか気づけないかは大きな違いがあります。ぜひ身の回りの工夫、「なぜ、こんな形になっているのだろうか?」「なぜ、この色なのか」「なぜこの材質が使われているのか」という「なぜ?」という問いから、設計者(デザイナー)と言われる作り手の意図を想像するようになると、身の周りのものが本当によく見えてきます。
そういった本物の経験を潜らせたプロジェクトなのか、そうでないプロジェクトなのかは大きな違いがあります。
2年前、全国の先生方と一緒に1冊の本を出版しました。点数のための授業、良い成績のための授業にとどまらない、人が成長するときのモーメントは?という問いを立てて執筆しました。筆者は「第3章テーブルタップ実習ー「あったらいいな」から設計プロセスを学ぶー」を分担執筆しました。ご一読いただけると嬉しいです。(沼田)
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