TVドラマで数学しよう!「フランス式指電卓」
古畑任三郎シリーズ「笑うカンガルー」
Season 1 – Episode 13 (1995年4月放映)
中学生の皆さんは、古畑任三郎シリーズを知っていますか?
皆さんが生まれる前にたいへん人気のあった推理ドラマで、田村正和が演じる古畑任三郎警部補が犯人とコミュニケーションを取りながら、論理的に追い詰めていくというストーリーです。また、毎回有名人が犯人で番組前半は犯行が描かれ、視聴者は犯人を知っていてドラマを観ていくことになります。スペシャル編では、SMAPやイチローが犯人役で登場したこともあります。
この回は、数学が至るところに散りばめられているので、3本の記事に分けて紹介します。(同じドラマの紹介になり、すみません) 陣内孝則さん演じる数学者二本松晋が「ファルコンの定理」を解明し、「アーバックル賞」を受賞します。その授賞式の行われるオーストラリアのホテルで事件が起きるという設定です。
この番組は、毎回、田村正和さん演じる古畑任三郎の独演がドラマのアバンタイトル(オープニング)になっています。この回は数学者が犯人なので、アバンタイトルも数学にちなんで「フランス式指電卓」と呼ばれる両手の指を使ったかけ算が紹介されています。以下に、古畑任三郎のセリフを書きます。
「ちょっと手を出してみてください。あ、いや、両手です。計算機が無くても掛け算が出来る便利な方法があるのをご存じですか。俗にいう『フランス式指電卓』です。ではやってみます。例えば“7×8=56”の場合。左は7を表します。ご一緒に、1、2、3、4、5、6、7。右は8を表します。ご一緒に、1、2、3、4、5、6、7、8。ここまでよろしいですね。次は答えです。56。10の位は立っている指を足します。2+3で5ですね。で、1の位は折れている指を掛けます。3×2でさんにが6。ということで、5と6で56、“7×8=56”です。九九を忘れた方はぜひやってみてください。では次に“8×9=72”にチャレンジ。よろしいですか。1,2…これ、たいへん時間がかかります。お好きな方は自分でやってみてください。」
では、「フランス式指電卓」がどうして計算できるのかを説明してみましょう。かけ算する2数はa、bとして、どちらも5より大きいとします。答えは、もちろんa×b=abになるはずですね。最初にa=7、b=8として、次にa=8、b=9として、以下の式を考えてみてください。
十の位は立っている指の和ですから、
(aー5)+(bー5)
と表せます。一の位は折っている指の積ですので、
(aー5)×(bー5)
と表せます。(かっこのついた式どうしのかけ算は展開と言って、中学3年生で学習する内容です。)
したがって、この計算の答えは、
{(aー5)+(bー5)}×10+(10ーa)(10ーb)
=10a+10bー100+100ー10aー10b+ab
=ab
となり、確かにaとbのかけ算になっています。
よろしければ、古畑任三郎が言うように、a、bに6〜9の数を実際にあてはめて計算し、確認してみてくださいね。
(数学科 園田毅)
<参考文献>
(1)「マスメディアの中の数学」馬場博史著 関西学院大学出版会
(2)「数学ワンダーランド10 シネマで数学・マジック入門ー数の計算」
勝野元薫著、銀林浩編 国土社
(3)「フェルマーの最終定理」サイモン・シン著、青木薫訳 新潮社・新潮文庫