ものづくりの向こう側
売り込む棚づくり
ものづくりの向こう側には何があるのでしょう?
ものを作ること自体が楽しい時もあるし、「あったらいいな」というようなアイデアが実現していくのも楽しいし、また自分がつくったものによって、使ってくれる人が喜んでくれる、幸せになってくれる姿を想像して楽しくなるときがあります。エネルギーが湧いてくるのはそんなときかもしれません。
学校という場所では、100点を上限にしてそこから何点足りないかというスケールを使って、学びの履歴を価値づけることが少なくありません。それによって、すべきことを見える化し、自分自身を向上させていくという場面もあると思います。
しかしながら、ものづくりの場面においては、100点から何点足りないかではなく、0(ゼロ)の地点からどこまでできたかというプラスの尺度でもって、学びの履歴を価値づけされます。
限られた材料と道具の中で、家庭で使えるもの、使ってもらえるものをマーケティングし、デザインしていきます。困ったことを解決すべく問題点をかんがえなおしたり、新しい方法を考えたり、より良いやり方を選択してものづくりをしていきます。
いろいろな個性豊かな木製の棚が出来上がってきました。四角いもの、八角形であったり、すごく狭いもの、背の高い棚、十人十色とはまさにこのことを言うのだなという感じです。
出来た作品をおうちに持って帰ります。広告もつけて“売り込み”ます。そしてユーザーの方からフィードバックをもらいます。そのフィードバックを読んで、自分自身の取り組みを振り返ります。
マーケティングしたユーザー(おうちのひと)から次のようなフィードバックが帰ってきました。
「かなり苦労して作ったようですね。作品をみるとよく伝わってきます。広告もなかなか力が入っています。¥300は安すぎます。もっと値打ちがあるように思います」(おそらくお母さん)
「もっと値打ちがあるように思います」という言葉。なんと素敵な言葉でしょうか。
それに対して製作者の生徒は次のように振り返っています。
「はっきり言って、自分の作品には自身が持てませんでした。汚いし、釘でかけてるし。家に持って帰ったとき、家族ががっかりするのを想像すると悲しくなりました。しかし、母や父は、上に書いてあるように、それも評価してくれているのに気付き、とても意外でした。だからせめて表面や角だけはつるつる、丸いと感じてもらえるようにがんばりました。・・後略」
ものづくりの魅力は、その向こう側に人と人とのつながりを感じることではないかと思っています。そんなものづくりを学校の授業という空間で思い切り味わってもらいたいと思っています。(沼田)